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ダービー 壺（1780-85年頃）
A Derby Vase C.1780-85

　ダービーの横長の楕円形の壺。ダービー(D4-12)と同型である（最後の写真を参照）。裏面には'No80W'と刻み込まれている。型番80を示すものだが、最後の'W'の意味合いは不明である。蓋は逸失している。

　装飾は、縁取り等に金彩が用いられている他は全体が白地で、胴体の両面にグレーの単色で女性たちと牛が描かれている。これは、フランスのロココ画家であるフランソワ・ブーシェによる「エウロペの略奪(Enlevement d'Europe (英：Abduction of Europa)）」から写されたものである。神話に題を取ったもので、牛に扮したジュピターがエウロペを略奪する場面を描いたものである。本品に描かれている図柄は、原画とは左右が反転しており、原画そのものではなく版画から写し取られたものだと考えられる。原画と版画は、以下のサイトで見ることができる。

ブーシェの原画（The Wallace Collection）：
https://wallacelive.wallacecollection.org:443/eMP/eMuseumPlus?service=ExternalInterface&module=collection&objectId=65418&viewType=detailView

版画（The Metropolitan Museum of Art）：
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/414302

　本品の製造年代については、確たることは言えない。この題材の絵付けは、18世紀ダービーのオークション・カタログには見つけられない。しかし、グレー単色の絵付けはチェルシー・ダービー期に見られる装飾であること（ダービー(D2-15)、ダービー(D2-19)を参照。）や、縁などの金彩も同時期の特徴を有していることから、この型の壺が導入された1780年代はじめ頃に作られたものでないかと思われる。なお、同じチェルシー・ダービー期の作例として、以下の作品がある。

Woolley & Wallis　(Lot 145, 15 Sep. 2015, Fine Porcelain and Pottery)：
https://www.woolleyandwallis.co.uk/departments/european-ceramics/pg150915/view-lot/145/


高さ(Height)：22cm

マーク： 裏面に刻み込みで、'No80W'。
Marks： 'No80W, incised at the bottom.

参照文献/References：
-John Twitchett "Derby Porcelain" Fig.276

（2020年5月掲載）