安価で出回っていたので、つい手を出してしまった。Windowsキー付きの日本語キーボードで、1996年台湾製。普段IBM製の高品質なキーボードを使用しているせいか、筐体の作りはかなり貧相に感じる。ケーブルの質も悪く、プラスティックの質も良くないうえ、チルトスタンドもフラフラだったりする。それでも、キー自体はメカニカルキーを鉄板に固定したうえで、プリント版に半田付けしてあるという、なかなかがっちりした作りである。スイッチの構造はALPS式のもので、比較的堅めのクリック感があるものである。キートップのぐらつきも比較的少なく、ストロークもスムーズなもので、このへんはDELL AT-103に似た感じである。
最初やたらチャタリングが起こるので、騙されたかと思ったが、どうも作られてから長時間放置されたままだったので、接点の調子が悪くなっていたようである。同じキーを何度も押すことで調子が悪いものも見事に復活した。それでも、それでも筐体の安定度への不信感、キートップのプラスティックの質の悪さなど、本質的な問題は消せるものではない。キースイッチの品質で、何とか全体をまとめてはいるが、かろうじて及第点というのが、妥当な評価のような気がする。
10キー部分を省略したSpace Saverキーボードである。Yahoo!オークションで通常1万数千円となるところ、幸運にも安価だったので文字入力用として入手したものである。白黒ロゴの1987年のIBM製。
通常はEnhanced Keyboardを使っているが、カールケーブルが取り外し式なので、その日の気分で使い分けるには都合がいい。Enhanced Keyboardにおけるタッチの違いはばらつきと言える程度のものであったが、Space Saverでは明らかにキーの特性が違っていて、ストロークはやや短く、それでいてクリック位置がより深い位置になっている。そのため、クリック後すぐ底に当たるので、キー自体がより堅く感じられる。もちろん、堅い底まで強く打ち込んでいては指を痛めてしまうから、結構微妙な打鍵コントロールが必要だったりするので、より上級者向けと言えるかもしれない。
LEDがないので、NumLockが入っていたりすると、通常の文字のところが10キーになってしまったりして、たまに困ってしまったりはする。それでも、その分マウスが近くにくるし、机の上が広くなるので、慣れてしまえば作業性は改善されよう。
別途コラムを立てておきながら、あえてレビュー記事としてキーボードについて書いておきたくなった。広い視点で、全体をまとめるのではなく、私個人にとってキーボードというものは何なのか整理してみる中で、今後の進め方が見えてくるのではないかと思う次第である。
Windowsが普及して、マウス操作が増えた分キーボード操作が減っているという意見をよく見かけるが、私はそうは思わない。確かに、Webをブラウズする操作などはキーボードなんてまず使わないが、業務上の連絡・報告・指示など、今まで対面や電話、メモなどで行っていたものが、いつの間にかmailに変わっている。手書きの文書などまず見かけなくなり、せいぜい業務の記録を手書きノートに残している程度である。どう考えても、キーボードの使用頻度が下がっているとは思えない。
以前のレビューでも述べた通り、私の入力環境は英語キーボードに移行した。日本語キーボードに比べて、キー数が少なく、操作が容易である。「変換」・「無変換」のキーが無いという問題は、キー割付の変更ソフトである「猫まねき」によって、「無変換」は「CapsLock」、「変換」は「ALT+Space」に割り当てることでひとまず解決している。邪魔な「ひらがな」キーが無くなり、誤ってかな入力モードになってしまう心配もない。何より、キーが少なくなったことで、「Enter」キーや「Backspace」キーが近くなって、タッチタイプがより容易になった。まだまだ記号の入力ではタッチタイプとなると戸惑う状態ではあるが、これはそのうち慣れる問題なので、全く心配していない。
私が英語キーボードに移行した理由がもうひとつある。IBM Enhanced Keyboard Model-Mを使用したかったからだ。長年IBM 5576-A01を使用してきた私にとって、いつの間にはIBMのBuckling-Spring機構を採用したキーボードは決して手放せないものになっていた。そんな中で、本格的にModel-Mに出会った衝撃は大きい。5576-A01に似たキータッチを持ちながらも、キーが包み込むような柔らかさをもっている。キーの押し下げ圧など、どう比べても5576-A01の方が軽いのに、Model-Mの方が柔らかく感じられ、同じはずのストロークも、なぜか長く感じられるのである。このへんは日本とアメリカの違いと言ってしまえばそれまでだが、そこはタイプライターから続いているキーボード文化の歴史を考えたら、納得できてしまう部分ではある。キーのクリックがより明確で、そのためかキーを底まで力を入れて打ち込んでしまうことがない。ガシャガシャと騒々しく、はた迷惑なキーボードではあるが、使用している本人にしてみれば、これほど快適なものはないと言える。
相前後して入手したキーボードのうちの1台。1993年U.K.製造。製造時期が微妙なせいか、ブルーロゴなのに排水口などもなく、作りはほとんど白黒ロゴのものと変わらない。ロゴ自体の色も、若干濃くて紺色である。ケーブルは着脱式だが、黒いカールケーブルのATコネクタのものが付属した。キートップは多色印刷で、あまり見かけない型番であるが、印字されている文字は標準的なものであり、機能的には全くP/N1391401と同じである。キータッチに関しても、一般的なEnhanced Keyboard Model-Mと変わりなく、少し弾力性に欠けるかなという印象がある程度で、このへんは誤差の範囲であろう。
美品と言われるものを入手したわけではないので、内部はそれなりに埃がたまっていた。それでも、キートップのテカリも比較的少なく、目立つような傷もなかったので、実用的には全く問題がない。
相前後して入手したキーボードのうちの1台。こちらは特に製造国の記載はないが、たぶん米国1987年製。白黒ロゴで、ケーブルは着脱式、キートップは多色印刷。前回入手した白黒ロゴは、ベースがホワイトだったが、今回のものは通常のブラック。テンキー部分の「+」「Enter」のキーにスタビライザーバーが取り付けられているのが、比較的古いものの特徴。内部の配線もLEDへの配線が独立していたりもするが、それ以外には特に変わった仕様は全くなく、ごく普通のEnhanced Keyboard Model-Mである。ホワイトベースとの違いか、キータッチは堅めで、よりかっちりした印象を受ける。
入手したときは、表面は清掃済でそれなりにきれいだったが、中を開けてびっくり、長年放置された上に水分が入ったのか、ゴミが固まって悲惨な状態。筐体の内側は水洗いできるが、キー部分はキートップを取り外して、ベースをこまめに洗剤で清掃するしかない。メンブレンスイッチだから、水分を染み込ませてしまっては終わりだから、慎重かつ大胆に作業する。キートップもサイドは汚れているから拭いておいた方がいいであろう。 そんなこんなで約2時間かかってやっと本来の美しい姿を取り戻した。電気・機械的には特に損傷を受けていなかったのが幸いである。主に数字入力だけしていたのであろうか、キートップのテカリもテンキー部分に多少みられる程度で、その他のキーはほとんど使用した痕跡がみられない。(普通に使っていれば、スペースバーに多少のテカリがみられることが多い)
現在もこのキーボードを使用して入力しているが、今まで使用してきたキーボードの中でもクリック感が明確な方で、よりIBM Buckling-Springらしいタッチを堪能することができる。清掃に手間はかかってしまったが、その分安価に入手できたので、よい買い物だったのではないだろうか。
何となくトラックポイント付きも試してみたくで、比較的安値であったベージュ色のものをYahooオークションで落札した。1997年メキシコMaxiSwitch製のもの。キーボードとマウス用に2本に分岐したケーブルは、直付けの薄っぺらいタイプ。それでも、マウスの線も含むためか、キーボードのみのものより幅が広くなっている。LED部分の下側にコネクタがあり、ここにPS/2タイプのマウスを接続して使用することができる。キーキャップは取り外し式のものが一般的であるが、取り外しができないタイプとなっていて、キートップの文字も単色になるなど、コストダウンされたものとなっている。ロゴはブルーで、排水機構も完備しており、このへんは手抜かりはない。キータッチは、一般的なLexmarkのものと大差なく、堅めのスプリングを用いたかっちりしたタッチである。ただ、本体の材質などはやや劣っており、押さえるとたわむ部分があるなど、強度的にやや劣るようである。
肝心のTrack Pointであるが、ドライバのフロッピーディスク(IBMは慣習的にディスケットと呼んでいる)が付いているのだけれど、変なドライバを入れてWindows2000がおかしくなっても困るので、IBMのWebサイトからダウンロードしてきたものを使用した。問題はインストールで、なぜかWindows2000ではマウスドライバを新規追加できない。そんなこんなで、一度マウスコネクタ部分にPS/2マウスを取り付けて認識させ、これをTrack Pointのドライバに変更する形でやっと使えるようになった。もっとも、これは筆者がマウスだけUSBという変則的な使い方をしているからで、最初からキーボードもマウスもPS/2であればマニュアル通りにPS/2マウスをTrack Pointのドライバに変えるだけでいいから、こんな問題は発生しないと思われる。
そんなこんなでTrack Pointは使えるようになった。キーボードからあまり手を離さずに、ウィンドウのちょっとした操作をできるので、案外便利なものだ。それでも、本格的な操作となると、やはりマウスを手放せないから、机の上が広くなるわけではない。それよりもちょっと困ったことがある。Track Pointが以外と邪魔になるのである。キーボードの上ほんの数mm出ているだけなのに、「B」の直前に「T」を押していたりすると、「T」から滑るように移動する左人差し指の爪が、しっかりTrack Pointにぶつかってくれる。会社で使っているThinkPad240だとこんなことはないのにと思ってよく確かめてみると、ThinkPadの方はキーが平板なので「B」に向かう指はあまり下に降りる必要はないのだが、立体的なEnhance Keyboardタイプでは、数ミリ下に降りる必要がある。このへんの違いがどうも、微妙に影響しているように思われる。
7月の初めにオークションについて書いたが、それからも何度かオークションで色々なものを入手した。一番多いのはキーボードであるが、それ以外にもこのレビューに登場したマウスやDATテープドライブ等々色々なものに手を出している。いくつか販売もしたし、今のところはひどいトラブルにも巻き込まれてはいない。それでも、オークションに関しては、知らない人が手を出すべきではないという感を以前よりも持っている。
筆者はキーボード関係を中心に日々チェックを入れているが、よく目に付くのが「ノークレーム・ノーリターン」の言葉である。これは、まあ悪い言葉で言えば「壊れていても泣き寝入りするしかない」ような出品である。それでもそれなりに高値がつくあたり、どうも入札者の見識を疑ってしまう。中には、明らかに出品者が動作しなかったから出品した旨記載されているのに、それでも高い値段を付けて落札し、挙げ句の果てにクレームをつけているケースもある。まあこれは極端な例だとしても、少なくとも「ノークレーム・ノーリターンに」の商品は、ダメで元々だとあきらめられる値段以外はつけるべきではない。まともな出品者なら、問題があればそれをちゃんと記載しているし、相性での動作不良程度は返品に応じるものである。
数百円の商品ならともかく、数千円以上(商品にもよるが、このへんの価格が出品や発送の手間を考慮して利益のでる価格である)の商品では、出品者の程度を見抜けるだけの知識がなければ、入札してはいけない。正確な品番が書いていない程度なら質問すればいいことだが、商品の程度についての説明がどう考えても少ないものが多すぎる。筆者が入札した中にも、説明が明らかに少ないものがあって、どうせどこかに問題があるのだろうと思って入札してみたところ、とりあえず動作はするものの中がゴミだらけだったり、ケーブルの接触がかなり微妙だったりと、たいてい何らかの問題がある。筆者はダメで元々と思える値段でしか入札しないし、自分で修理するなりして回復させるからトラブルにはならないが、そんな知識のない人が本気で入札していたらと思うとぞっとする。このへんが巷で「オークションは危険である」と言われる所以であろう。
商品ジャンルにもよるが、最低限必要な説明はほぼ決まっている。新品でない場合は、傷や汚れの有無だけでなく、痛みやすい箇所や、その商品の重要な機能がどれだけ完全なのかあるいは消耗しているのかを伝えるのは、出品者の義務であろう。筆者の場合オークションに関してはキーボード専門に近いので、キーボードについて書いておくと、ちゃんと動作するかどうかだけでなく、肝心なキーの程度、特にキートップの磨り減り方やキータッチの劣化(ゴムやスプリングの劣化)、キーの押し下げに関するスムースさ、キーボード内部の清掃の有無など、写真を見ただけではわからない部分をちゃんと解説しているかどうかが問題となる。
これらの説明がなされていない出品は、たとえ悪意がなくても商品知識に欠けた出品者によるものなので、十分なチェックができていない可能性が高い。説明がない箇所はノーチェックだから、少なくとも完全であるとは思わない方がいいし、「最悪」の状態もあり得る。これらを想定して入札するには、入札する側にも商品知識が必要で、特に中古品になった場合にどんなところに問題が出やすいのか知っておかないと、程度の悪い品をつかまされることにもなりかねない。あまり取引経験のないうちに、高額な商品に手を出すのは、かなり危険であると思う。
これだけ危険だと言いながら、筆者はオークションの存在には肯定的である。コンピュータのパーツなどある程度専門的な商品に関しては、地域のバザーなどでのリサイクルは困難だし、業者による中古品販売でも全国的な流通は難しい。ネットワークを使って希望の中古品を売り買いできる環境は、オークションならではのもので、前述のような「危険さ」を補ってあまりあるものだと考える。それでも今の「危険さ」は、何とかならないものなのだろうか?Yahoo!も評価制度(相互評価である以上、大きな問題がない限り悪い評価にはしづらいという致命的な欠点があり、悪い評価がなくても信じてはいけない)を導入したり、クレジットカードでの認証(個人が複数のIDを持ったりして不正な入札を行うことを防止する効果はあるが、組織的な不正に対する効果は疑問)を行って、悪質な利用者を閉め出そうと動いてはいるが、悪意の程度がさほどでもない人や、参加するだけの能力を持たない故に迷惑をばらまく人までは排除できない。モラルの問題だという人もいるが、たいていの出品者はそれなりのモラルを持って出品している。一部のモラルの欠如した人に対して、モラルを叫んだところでどうしようもない。では、彼らはなぜ出品を続けるのだろうか?それは、でたらめな出品でもそれなりの値段で落札されるからである。
一般的には、悪質な出品者に対して落札者が不利益を被ることが多いとの記述が多いが、筆者は逆の問題を提起したい。前述したように、不良を明らかに明示した商品に対して、まるでまともな商品である(と思いこんでいる)かのような高額の入札は、明らかに入札者の問題である。さらに踏み込んで、たとえ不良が明示されていなくても記載されていない部分は全く問題がないと決めてかかった(かのような)入札は、出品者を良心的な人だと決めてかかって、甘えていると考えられなくはないだろうか。その甘えこそが、悪質な出品者をのさばらせている元凶なのだと筆者は考える。
ネットワークを利用した商品売り買いにおいて、特に買う側の経験不足が目につく。同じ商品なのに、不良箇所を含めて程度をきちんと説明した誠意ある出品よりも、製品の良いところばかりを記述した、でたらめな説明しかない不誠実な出品の方が高値を付けることがままある。これでは、出品者のモラルが下がるばかりだ。入札者は説明不足の不誠実な出品にはそれなりの価格で応札すべきで、出品者の良心に期待するような甘えは禁物である。また、不充分な説明しかない商品に対しては、たとえ他の人が高額で入札していたとしても、その商品がそれだけの価値を持っているのかどうか、不充分な説明の裏をよく考えてから入札してほしい。その商品を評価するのは他の高額入札者ではなく、今入札しようとしているあなた自身なのである。いくらほしい商品であっても、でたらめな出品にはそれなりの価格でしか応札しない賢い参加者が、不誠実な出品者を駆逐するのであると筆者は(自戒の意味も込めて)考える。