蕎麦の唄

                       北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形
  北海道/なっと節

        裏の畑に蕎麦まいて、そのまた隣に粟まいて、そのまた隣に黍まいて、アラ傍とて
        逢わなきゃ気味(きび)悪い)

  
         傍とて逢わなきゃ気味悪いは、それぞれ蕎麦・粟・黍にかけた洒落。
         北海道における蕎麦栽培は元禄八年(1695)松前凶作にして種子を失ひしかば、
         翌九年松前藩より南部藩へ粟五石、蕎麦三石、小豆五石、大豆若干購入を依頼せり」との
         記録が一番古いようだ。
         そば売りは文化年間(1804〜18)に江差の津花町にある茶店福田屋のお糸とお里の二人の
         娘が豆腐・餅・そばを堤重に入れ、沖に停泊する船乗りや乗客に売ったのがはじまりだという。


   青森/十二足踊唄(盆踊唄)
 
        お前ばり盆だな 蕎麦芋の  おれも盆だネ 豆もやし

         蕎麦芋は山芋のことで、下北半島ではそばに山芋をかけて食べるのはご馳走とされている。
         豆もやしは、南津軽郡大鰐町の古くからの名物で、もっとも庶民的な食べ物。
         したがって、蕎麦芋などぜいたくな盆の馳走を食べられる人たにに対する、ひそやかな抵抗を
         こめた唄かもしれない。

   岩手/御祝(祝儀唄)
 
        めでたい花だよ 大根の花   花咲いてナー 俵となるはおめでたい
        それよりめでたい 蕎麦の花  花咲いてナー みかどとなるはおめでたい。
   
         東盤井郡室根村津谷村で婚礼の席で歌われる。
          大根の実は俵の形に似ており、みかどは御門にかけている。

   宮城/さいたら節
 
        花咲いて ヤーヨーイ 三角となるは 蕎麦の花 トエ
       ハーエート ソーリャー サーイトナーエー
       目出度い花は 蕎麦の花
       ハーエイト ソリア サイトナエー
       花咲いて ヤーヨイ 三角となるは 蕎麦の花エー 
       ハーエート ソーリャー サーイトナーエー

  
        牡鹿半島の櫓漕ぎが大漁祝いに用いられ、囃子詞もアレワエーエ エトソーリャ 大漁だエと変わり 
        宮城県の民謡として有名にになった。

   秋田/秋田音頭
  
        俺た家(え)の お多福滅多に無いこと 鬢とって髪結(ゆ)うた(アー ソレソレ)
       お寺さ行くとて蕎麦屋さ行ったば みんなに笑われた

 
        寛文三年(1663)に藩主佐竹義隆が城下久保田(現秋田)で流行した手踊りを改良させ
        音頭に合わせて演じさせたのが始まりだと伝えられている。

   山形/小国松阪(祝儀唄)
  
        ハー めでたいものは 蕎麦の花ヨ ハー 花のさかりに 倉を積み
 
        最上郡最上町で歌われる、稔る蕎麦の実を米蔵や金蔵などの富貴を示す倉にみたてた
        祝い唄である。 

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