蕎麦の唄
                        三重・滋賀・兵庫・奈良・和歌山

 三重/茶揉唄
     
     志摩のあらねは 何食て肥える 蕎麦のねりげに 塩辛まいて うまいうまいと 言(ゆ)て肥える
     コラコイ コラコイ

 
      毎年四、五月になると、志摩の海女は茶所へ出稼ぎにゆく。
      蒸篭で蒸した茶葉を、煤炉(ほいろ)にかけて揉むときの仕事唄である。
      「ねりげ」とは蕎麦粉と甘藷の雑炊、または蕎麦がき。郷土食の一つで新蕎麦と新藷のとれる十一月頃が
      一番うまい。

 滋賀/嫁入唄(祝儀唄)
    
     目出度いものは蕎麦の種エ(アーヨーイヨイ) ずいぶん伸びてエ(アーヨーイヨイ)
     みかども止めるナーンヨエー

 
      女夫の盃がすむと花嫁は別室に退き、親戚同士の酒宴に移る。このとき婿方の親戚一同が嫁方の親戚に
      酒を勧め、その飲む間に酒の肴として歌った。

 大阪/ふなぶし(祝儀唄)
 
     目出度いな 目出度いな (サーヨイサ ヨイサ ヨイトマカセ)
     目出度いものは 蕎麦の木よ (サーヨイサ ヨイサ ヨイトマカセ)
     軸は桃色で葉が青で 二蓋三蓋にゃ花かけて 末でみかどの実をむすぶ ヨイサエ


 兵庫/山卸唄(酒造唄)
 
     色は白ても (アラヨーイナー ヨイヨイ)  饂飩は嫌じゃ (ヤレ) 
     わたしゃあなたの (アラヨーイトナ) そばがよい

 
      冬至酛(もと)といって、酛始めは冬至の日にする蔵が多かった。そのときに歌われる唄である。

 奈良/祝儀唄
  
     めでたきや 目出度や めでたきものは蕎麦のから 
     末三尺にふし七つ これで三(み)かどの倉建てて
     めでたきや 目出度いや めでたきものは芋のかぶ 
     子に子がさいて曾孫だく おっとちちのび末ひらき 朝は黄金の露がうく

 
      吉野郡十津川の上湯川大桧噌部落のウイタ家に伝わる「お祝いの歌」である。
      この唄の途中で他の唄をはさむことは許されず、済んだあとは勝手次第というのが永年のしきたりに
      なっている。
      蕎麦の「から」は、茎の方言。「みかど」は三門で、三棟(むね)の意にも掛けている。

 和歌山/紀州節(盆踊り唄)
 
      色は白ても 饂飩はいやよ 少しゃ黒ても (コンサイ) 蕎麦がよいぞえ(そうかえノンシ)
      (それでも有ろかい まことのことかよ みんなうそうそ)
 
       紀北で歌われる、囃子詞が中と最後に入るのが特徴。


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