蕎麦の唄
                新潟・富山・石川・福井・山梨・長野・岐阜・静岡・愛知

  新潟/おけさ節
  
      おけさ正直なら そばにも寝しょうが  おけさ猫の性(しょう)で じゃれかかる
 
      
「御笑草諸国の歌(天保ころ?)には「越後の国出雲崎 おけさ節と題してあり、古調おけさ節の
       歌詞である。
       ハー佐渡へ 佐渡へと、、、と歌いだす「佐渡おけさ」とは曲節が違うが、いずれももとは北九州の
       「ハンヤ節」と言われている。
       現在は「新潟おけさ」と呼び、主に新潟芸者が座敷歌として歌う。
        
  富山/ぼう尽くし(盆踊り歌)
    
       エー ためしに魚釣る太公望 義経家来の 武蔵坊  入道のつくのはどんつくぼう
       饂飩に素麺とちめんぼう 量りの目には正直ぼう  住吉踊願人坊 鞍馬の山は僧正坊
      夏来るとんぼは 赤とんぼう  子供の遊びが隠れんぼう
      細ても強いは樫の木ぼう 持って放さぬしんないぼう
      盗人(ぬすびと)の為には要心ぼう 戸口に立つのは道心ぼう 
      金を取り出す大泥ぼう 男の持つのは六寸ぼう
      有りても呉れぬ横着ぼう  富山のこっちの安養ぼう
      富山のあっちの常願坊  地蔵に観音南無三宝
      番頭にゃ辛抱 雨戸にゃせんぼう
      担(かた)ので走るは小便ぼう、、、、、
      ホゥーイ   ホゥーイ   ホゥーイ 
 
     
 砺波郡で歌われた盆踊り歌である。
       「とちめんぼう」とは栃麺を伸す棒。栃の実の粉を麦粉と混ぜてこね、蕎麦切りのように
       作ったのが栃麺だといわれているが製法が難しいためか滅多に見かけない。
       栃麺棒は狼狽する意に使われ、「めん食らう」といのは、この麺だというがはたしてどうだろうか。

   石川/木遣唄
       
        めでたいものは 蕎麦の種 タネリーリヤターネーター
        花咲く実がなる みかどたつ アーエトコナーヤイト

     
  羽咋郡で歌われた。
 
   福井/よいそれ
 
       ノットメサンの女郎衆 顔に蕎麦の粉が アー ヨイソレヨイソレ 二斗六升ヨー
       蕎麦の粉が顔に 顔に蕎麦の粉が 二斗六升ヨー
  
        
大野市上・下打波地区に伝わる。
         白山神社の春秋の祭りに境内などで踊るが、特別な衣装を着ることもなく
        
伴奏の楽器もいらない。

   山梨/戸板に豆(製糸唄)
 
        戸板に豆はよく転ぶ おじょうものは蕎麦粒なりか こーろばぬ
 
         「戸板に豆」は口説いても拒まれる諺だが、八代郡の製糸工女の仕事唄である。
         転ぶはころがることと、私通することを掛けている。
         「おじょうもの」は娘の方言。蕎麦は三角なので、大豆と違ってそう簡単には転ばない
         (なびかない)というわけだ。

   長野/盆踊唄
 
        臼の目なりのだんだら畠 蕎麦の花咲く 番所(ばんどころ)原 北安曇郡
        踊りおどるなら 三人でも四角 三人三角は蕎麦のなり  北安曇郡
        誰も踊らじゃ おら三人で 四角三角 蕎麦形(なり)に  北安曇郡  
        信州信濃の 新蕎麦よりも わたしゃあなたの そばがよい
  
        
信州信濃の、、は文化・文政(1804〜1830)ごろに流行したという。
         各地に類歌が多い。
         わしにしょわせて横浜へ 信州信濃の新蕎麦よりも わたしゃあなたのそばがよい(静岡茶摘歌)
         信州信濃の新蕎麦よりも 可愛いお殿のそばがよい(愛媛伊予市機織唄)
         その他、富山の五箇山追分、三重の突櫂唄(酒造唄)、大阪市の女工唄、呉市の石工唄等々。

       /更科節(新民謡)
         信州信濃の更科そばは ソラサイ 馬の鼻息で サラサット すぐゆだる ナッチョモ ナッチョモ  

         昭和三年十月に北原白秋が作詞、町田嘉章が作曲した。
         白秋は他に新潟小唄、多摩川音頭とチャッキリ節がある。
         「蕎麦は牛(または馬)の鼻息で茹でる」の諺がある通り、そばは僅かの熱ですぐ煮える。
         茹ですぎるとへたるばかりでなく、香りも飛んでしまうので、昔から蕎麦職人の恥とされた。

       /信濃節(新民謡)
         蕎麦は更科 月なら田毎ヨー お国自慢じゃないけれど イヤミスズトセ
    
          昭和三年野口雨情作詞、杵屋六左衛門・六次郎作曲の新民謡。

   岐阜/白川輪島
 
        能登の輪島は そうめんどころ  空が曇れば ならぬしょく
 
        
天正十四年(1586)金森長近が飛騨に就封した頃、能登の輪島から多くの若者が漆掻きに
         入った、長い間の山村暮らしに飽き、輪島出てから今年で四年 元の輪島に帰りたやなどと
          望郷の念にかられて歌ったという。

   静岡/籾摺唄
 
       目出度いことはナーエ 蕎麦の花  (ヨッコラエ) エ三蓋(さんがい)に花咲く (ア ヤリコメ)
       アー□□□□  三角(さんかく)みかどで オイオイ納まる 

  
        駿東郡金岡村(現沼津市)歌われた。

   愛知/盆踊唄
   
       
踊れ若い衆 今宵がかぎり 明日は稗(ひえ)切り、蕎麦つくり  南設楽郡鳳来町四谷
        蕎麦がよいかよ 饂飩がよいか  少し切れても そばがよい  北設楽郡  


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