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2006年5月1日
2.キラキラ 輝いている人
「桜が咲きました」というメールを若い友人からもらった。さて?どなただったかな、と一瞬 相手がわからなかった。そうだ、昨年の12月に文京区シビックセンターで一緒に「忠臣蔵」(前のおしゃべりコーナーに掲載)を踊った女性、確か「浪人生です」といっていたSさんだ。
第一希望の東京芸術大学 先端芸術表現科に合格したとのこと、早速 お祝いの食事をすることにした。
「何が希望?」という問いかけのメールに「中華がいいです」という返事。東京ドームホテルのロビーで待ち合わせた。おや なんだか、12月より、ふっくらしたみたい、、という第一印象だった。食事をしながら、受験勉強のこと、試験のことを聞かせてもらった。
Sさんは国立の高専を4年で中退して芸大の受験のため仙台から上京、1年間 御茶ノ水の美術系専門予備校に通った。ぴかぴかの20歳。住まいは茗荷谷の6畳のアパート、お風呂はなくシャワーのみ、そして ここに入るにあたって面接があったそうな。約10部屋は 原則学生のみ。「でも おばあちゃんがいるんです。もしかしたら アパートに最初に入ったときは その人も学生だったかもしれません。だって ものすごく古いアパートですから」という。
圧巻は「ポートフォリオ」という 受験のため提出したという課題を見せてもらったときのこと。何を提出するか? まずものすごく悩んだ。そして雑誌形式で「私の20年、そして今の私を表現しよう」と決めてからは、ほとんど1週間 PCの前にいた。食べ物は 手の届く範囲において、寝るのも惜しかったので寝袋に包まってPCの画面とにらめっこしていた、というのだ。
写真、文章、そしてそれらを、<雑誌>という形にまとめたアイデア。とてもその「ポートフォリオ」を 私は文章で表現することができない。デッサン、論文もおのおの5時間の時間でしあげたという試験。わたしは思わず、「お昼はどうしたの?」と質問した。
「自由です。食べても食べなくてもいい。でも 私は自分でお弁当を作って、ゆっくり食べて、また続けました。だって、食べないことには 力が出ませんから」という答え。
心に残った彼女の言葉。「合格して嬉しいんですが、一緒に勉強してきた10人中、合格したのは私1人、だからあまり 喜べませんでした。でも 今日は本当に心から喜べて嬉しいです」そして「自宅で ご飯をつくってもらって受験勉強だけしている人には 絶対負けたくないと思いました。だってものすごい決心をして高専をやめ、田舎から出てきたんですから」
「絵とか写真とかいろいろ表現の手段はあるけれど、わたしは言葉・文章に拘っていきたい。そして身体表現にも」とこれからのことを語った。
キラキラ輝いている 彼女を前にして、私自身もすごいパワーをもらった。2006年の春の夜の素敵な出来事だった。
Sさんこと清野仁美さんの作品。
文中の<ポートフォリオ>に使用したものです。
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