2016年1月1日
5.今どきの学生との対話
都心のB大学で教えて、かれこれ10年になる。さまざな学生との出会いと別れがあった。
未だに目が白黒することを日々 体験している。
<その1>
大学を中途退学する学生との面談を過日、行った。
これはその時の会話である。
学生「―― 普通、学校の先生って“せっかく、ここまで頑張ったんだから、途中でやめるな”っていうじゃないですか。でも先生は引き止めないですね、どうしてですか?」
私 「だって、あなたは自分なりに考えに考えて決めたことでしょう!? 今更 わたしが引き止めたところで、自分の決心が変わるの?
わたしは、一番大切なものは時間だと思うの。あなたが残念だけれど“大学を辞めて働く”と決めたなら、早くそちらにギアチェンジして、新しい道を目指してがんばってほしい、と思っているのよ」
辞めるな、と引き止められる?ことを期待していたのだろうか? あまりのわたしの対応のあっけなさに、彼は拍子抜けしたような様子でした。
私 「大学で学んでよかったことは?」
学生 「友達ができたことかな!? ゼミで一緒だったAやBとは 今でも月1・2度会っていますよ」
以前より、明るい表情でたくましくなった彼の後姿に「頑張れ!!」とエールを贈りました。
写真はいずれも長年担当している自治体研修での様子 |
<その2>
わたしの担当している「ビジネス・プレゼンテーション」は、今年はなぜか履修する学生数が多い。約80名が登録している。どうしたら学生の参画意識が高まるか、工夫の結果毎回質問票を配布して、必要に応じてその質問の解答を次回の授業で講義する。
最近、まさしく“目が点になる、質問”があった。
―学生からの質問@
「グループ討議の時、司会をやったが ちゃんとこちらの顔を見ないでおしゃべりをしている人がいる。“こっちを見て発言して”ときつくいいたいのだが、親しい仲なので嫌な顔をされたくない。どうしたらいいですか?」
えーええ、これってどういうこと!?正しく、この学生の言いたいこと?訴えていることが、一読しただけでは私はキャッチできない。つまり、司会役をやったのだが、メンバーが非協力的である。しかし、それを注意したら“嫌われそう”、だからどうしたらいいですか?
ということらしい。
実はこのような質問と言えないような質問が結構多い。「こうしたらいい」とわかっていても、「自信がないから」「嫌われそうだから」できませんー と泣きをいれてくる。
「そうそう、それは 大変でしたね」と 慰めてほしいのかしら?
それについて、私の解答は。
「気持ちはわからないでもないですよ、だけど“嫌われたくないから言いたいことが言えない”では、これからみなさん仕事の場・職場では生きていけません。どうしたら、相手に伝わるように伝えるかがコミュニケーションの勉強ですから、ちょっと勇気を出して相手に働きかけて言ってみることが大切ですね、話をやめて こちらを見てください、ときちんと伝えること」
―学生からの質問A
「物事を決める時 多数決以外にどういう方法があるんですか?」
この日は授業で事例研究を行なった。「まずははじめに、他人と相談しないで自分なりの意見をまとめてください。そのあと、グループのメンバーで意見を出し合って、グループとしての意見をまとめてください。本日の事例研究に正解はありません。したがって、まず私の意見はーーです、その理由は、、、、です、と 発言してください。自分以外の人の意見もよく聞いて、最終的にグループとしての結論を出してください。簡単に多数決で決めないでね」と 注意事項を話して取り掛かったのだった。
その結果の質問なのである!!
これを書いたのは、1年生の女子。おそらく高校で、まともなグループ討議を体験してこなかったのだろう。多数で何かを決める時は、全て最終的に(もしかした 初めから)多数決で決めるーという場しか知らないでここまできたのだろうか?あまりの、率直さ?にこちらが唖然としてしまった。
もちろん、次の授業で「多数決は時間内にどうしても結論を出さなければならない最後の手段にすぎません。特に先週の今回の事例研究に正解はないと言ったのですから、自分以外の他のメンバーの意見に耳を傾けて、、自分の意見がその結果変わったこともあったでしょう?少数意見であっても、参考になる意見はきっとあったはず、、です。だからね――――」と 私にしてはこれ以上ないくらい懇切丁寧に講義した。
もちろん、理解力について大きなバラつきがあるのは否めないが、わかる学生にはわかってほしいと、ついつい熱くなってしまうのだ。
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大学の教員同士で、“今どきの学生”について会話する。もちろん、大学によるレベル差もあるだろう。が、しかしーー 「気が利かない」のではなく、「気づかいない」からできないのだ、という私なりの持論で投げ出さず、ここまでやってきた。
それにしても、「今どきの若者は、、、」「このレベルで 本当に 社会に出ていけるのか?」と 心の中で叫んでいる。
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