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ざっくばらん ゆき子のおしゃべりコーナー
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2019年3月1日

1.旅のだいご味― わくわくする人との出会い


1)タイペイで出会った日本人男性
     ―「きっかけは 3・11震災です」 
 

2018年末、台湾に行った時のことです。
まだあまり日本人には知られていない台北の中心部から地下鉄で30分ほどの「林家花園」に行きました。ここは偶然にメジャーでないガイドブックで見つけて「もし、時間があるならぜひ行ってほしい」という記述に惹かれて、半年前に初めて行ったところでした。

 

 

 

 入場チケットを買って、入り口に足を踏み入れた途端に「日本の方ですか?」と声をかけられました。あまりに自然な日本語なので「日本語がお上手ですね」と返したら「はい、わたしは日本人です。関西弁で恐縮ですが、よろしかったらご案内します」とにこやかな笑顔で会話が始まりました。

 

 その昔の大富豪・林さんの家・庭を保存整備して、台湾内外のお客様にご案内をしてくれます。およそ1時間がめやすといっていましたが、「どうも私は長くなりがちで、、」と熱をこめて1時間30分ほど、ご案内いただきました。

 

 


 最後に「何か、質問はありますか?」という問いかけに、わたしは思わず失礼を顧みず「あのー Oさんはなぜ、ここでボランテアをなさっているのですか?」と直球を投げてみました。年齢はおそらく60代の半ば、大変な博識と流ちょうな中国語。きっとそれなりの、背景?ドラマがあるに違いありません。
 彼はわたしの質問を柔らかに受け止め「ええ、これには 一言では語れない、長いストーリーがあるんです」と口を開きました。

 

 要約すると次のようなお話でした。
「そもそものきっかけが、2011年 東日本大震災です。このとき台湾から多額の御見舞い金がきたんですね、ご存知と思います。それを知って、日本人である私は一体どういうお返し・お礼をできるか、考えたんですね。会社を辞めて台湾で勉強をしていました。それで、この台北にきた日本人に少しでも台湾のことを知ってもらえたら、、まだあまり知られていないこの林家花園のことを直接説明することによって、台湾のお役に立つのではーと思ったんです。今は、日本と台湾と半々くらいの生活です。わたしが直接ガイドすることもありますが、その他に台湾人のガイド養成にも力を入れていますよ。」

 

 

 

もう1つ興味深かったのはこういう言葉をきいたことです。
「残念ながら、台湾人というのは文化・歴史にあまり興味関心を持たないんですねえ。何に関心があるか、ですか? ―お金儲けですね。古いモノより、今を生きるほうに、、興味があるんですよ」
私は政治体制とかそういう思想的なものが背景にある(文化・歴史に重きをおかない理由として)のかと推測していたのですが、あっさり「金儲け」と言われて、力が抜けました。(苦笑)

それにしても、こんな素敵な日本人男性がいる!! とわかっただけで、とっても嬉しい出会いでした。

 

 

 

2)それは、まるで京都からの贈り物のように 
     ― 30代の素敵な女性

極寒の京都に行ってきました。最近、狙っているのは「人気(ひとけ)のない京都」「静かな京都」です。季節なら真冬か、桜と紅葉を避けた5月か10月頃。次々に新しいホテルができて、ネットでいろいろ調べて居心地のいいところを探すのも大きな楽しみの1つです。

 

今回は3泊4日で、ホテルも初めての新しいところ。非常に便利な三条にあって、おそらく膝が回復したこともあって、思いがけなくたくさん歩きました。鴨川のほとりを三条から出町柳まで。もっと三条から四条、祇園通り、木屋町通など ふらふらと、、、。
 そして気が付いてみたら帰る日、4日目までほとんど誰とも話さない時間を過ごしました。

 

 

 

 昼過ぎの新幹線で帰る予定でしたので、最後の場所にと、東福寺そばの光明院に向かいました。石庭と紅葉が素晴らしいお庭ですが、今はもちろん石庭と春を待つつつじがあるのみ。ここで人に会うことはめったにありません。
ところが、靴をぬいで玄関を上がった途端に「おはようございます」と爽やかな声と笑顔に迎えられました。30代はじめ?の素敵な女性でした。おそらく彼女にしても「ここで人に会うなんてー」と意外に思ったのでしょう。

 

 お庭に面して本堂他いくつの部屋がありますので、私はお気に入りの本堂の端の縁側に座ってしばらくお庭を眺めていました。「ああ、またこの庭に来ることができた」という感慨にふけっていました。

 

すると、さっきの女性の声が聞こえてきました。廊下の天井にある染みについて「もしかした、あれは血天井ではないですか?、、、、」とお寺の方に尋ねていました。
わたしもこの寺のことは興味があったので「もしかして、それってどの辺ですか?」と、話しかけたのが始まりでした。

 

 

 

大阪に住んでいること、「京都検定」のため勉強中であること。そのために 自分で歩いて写真を撮って勉強しているんです、などと屈託のない様子で話してくれました。さらに立ち上がる時、すこし膝をかばった私の様子をみて「私の母も膝が悪いんです」と言って膝の手術についても率直にいろいろと質問をしてきました。

 

別れ際、私は気になっていた<鴨川の飛び石について>質問してみました。「すみません、わたしはお答えできませんが、検定を勉強している仲間にはメチャ詳しい人がいますから、、調べてお返事します」と言われたのです。
「急ぎませんから」と言ったのに、なんと次の日、自宅のPCに彼女からのメールが届きました。

 

さりげない旅先での出会いと会話。それだけでも十分、わたしの心に爽やかな風がふいたような気持だったのですが、それ以上に素敵な余韻を残してくれた彼女のたたずまいは忘れ難いですね。それはまるで旅の最後に<私への、京都からの贈り物>のように感じられました。

 

 

 

 

 



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