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チェルシー 「メクレンブルク-シュトレリッツ」型の風景画皿(1765年頃)
A Chelsea "Mecklenburg-Strelitz" Moulded Plate with Landscape Decoration Ca.1765





 

 

 チェルシー窯のゴールド・アンカー期(1759-69年)を代表するディナーセットの一つに、「メクレンブルク-シュトレリッツのセット(Mecklenburg-Strelitz Service)」がある。これは1762年に国王ジョージ三世とシャーロット王妃により注文され、翌63年に王妃の兄でメクレンブルク‐シュトレリッツ公爵であるアドルファス・フレデリック四世に贈られた、フランス風のロココ様式によるセットである。

 本品は、この「メクレンブルク‐シュトレリッツのセット」と同様の型及び縁模様の皿である。縁に五箇所設けられた浮き彫りの枠の内側は染付の深い藍地となっている。その枠は金彩で縁どられ、枠の染付地の上にも金で昆虫が描かれている。その枠と枠に間には花綱が多色で描かれている。ここまでは、「メクレンブルク‐シュトレリッツのセット」と同様であるが、皿の中央に描かれた絵柄が異なる。本品はカラーの風景画を中心にして、周囲に昆虫を散らしたものであるが、「メクレンブルク‐シュトレリッツのセット」は、エキゾチック・バードを中心にして、昆虫を散らしたものである。

 「メルケンブルク-シュトレリッツ」型で図柄も同様の別セットが、オリジナル・セットの翌年(1764年)に、「これが最後」と銘打って売り出されている。そう宣言してしまったものの、王室人気にあやかるために、中央図柄だけ風景画に変えて出したのが本品(を含むセット)だったのではないだろうか。(なお、型だけ同じで、縁模様も含めて異なる図柄の作品は他にもある。)このような多色彩の風景画は、チェルシー作品にそれほど多く見られるわけではない。熟練した筆さばきによる、落ち着いた画風である。

 なお、オリジナルの「メクレンブルク‐シュトレリッツのセット」は、持ち主の変遷を経て、現在では大部分が英国王室の所有となっている(「バッキンガム宮殿クイーンズ・ギャラリー」のページ参照)。ただし、一部はヴィクトリア&アルバート美術館ボストン美術館ウィンタートゥアなどに収蔵されている。

直径(D): 21.5cm
マーク/Marks: A gold anchor and three stilt marks at the bottom
参照文献:
-Elizabeth Adams "Chelsea Porcelain (First Edition)" pp.155-158 and plates 126 & 127
-W.B. Honey "Old English Porcelain (Revised Edition)" p69 and Plate16A
-Bernard Rackham "Catalogue of the Schreiber Collection Vol.I Porcelain" No.210 and 211(Plate30)
-D.L. Fennimore and P.A. Halfpenny "Campbell Collection of Soup Tureens at Winterthur" No.83 (pp.154-155)
-J.E. Nightingale "Contribution towards the History of Early English Porcelain" pp.xxiv-xxv
(2009年12月掲載)