ドクター・ウォール 「ファンシー・バード」 ティーカップと受け皿 (1770-75年頃)
Dr. Wall "Fancy Bird" TeaCup and Saucer Ca.1770-75
カップ、受け皿ともに縦縞(flutes)が入っているが、この形状のカップには、本品のように、オウジー・ハンドル(ogee handle)と呼ばれる、いわゆる耳型の取っ手が付けられる。この形状のカップは、ウースターでは1770年頃に導入された。(ウースター「W31」参照。)
図柄に関しては、受け皿には、縁の部分は染付けと金彩が、中央にはファンシー・バード(fancy bird。このようなカラフルな鳥と風景とを組み合わせた図柄は、現在では、エキゾティック・バード(exotic bird)、ファビュラス・バード(fabulous bird)その他色々な呼び名があるが、18世紀当時はファンシー・バードと呼ばれた。ウースター「W12」、ダービー「D1-6」、ロントンホール「LH1」参照。)とそれを囲むように金彩でハスク(husk)模様が施されている。カップにも染付けとハスクが外側に、ファンシー・バードが内底に(写真右下)描き込まれている。エナメル、金彩ともに、非常に丁寧に仕上げられている。
このような図柄の作品には、ジャイルズ工房など部外で絵付けが行われたものもあるが、本品に関しては、カップ内側の金縁の細密さから、ウースター自身による絵付けであると判断される(ウースター「W18」参照)。
なお、カップには三日月(crescent)マーク、受け皿にはWマークと、異なるマークが付けられている。しかし、どちらのマークもこの種類の作品に(厳密な区分なしに)用いられたこと、絵付けや金彩も同一水準であることから、当初からのセットであろうと考えられる。
マーク:カップ裏面に染付けで「三日月」マーク。受け皿裏面に染付けで「W」マーク(写真中上及び右上)
Mark: <Crescent> painted underglaze blue on the bottom of the cup. <W> painted underglaze blue on the bottom of the saucer. (photos center and right above)