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バイオディーゼル・プロジェクト 2004            by Douglas FIR

 

2002年から03年の「植物性廃油(WVO)からバイオディーゼルをつくる」セミナー後、ESIでは、毎月駒ヶ根市でどれほどのWVOがでるものかを調査した。飲食店からだけでも毎月2000リットル以上はあるだろう。駒ヶ根でも大きなレストランと温泉施設が、2004年秋から毎月200リットルを越す廃油を提供してくれている。小規模レストランでは月20〜80リットル平均だろうか。一般家庭で捨てられる廃油を含めれば、駒ヶ根市全体で毎月12000リットル以上になるにちがいない。

この資源を処理する団体が地域にみあたらなかったので、2004年夏、ESIはバイオディーゼル・リアクターを製造することにした。

かれこれ五年以上もアメリカやヨーロッパ、南米の研究者やバイオディーゼル製造工場主たちと情報交換をしているのだから、私にも、自分のバイオディーゼル機をデザインする責任があった。そのデザインは、自分でつくるバイオディーゼルを燃料にしたバンを、アメリカじゅうで乗り回している友人から多く影響を受けている。彼はバイオディーゼル機を搭載したトレーラーを車の後ろにくっつけて、道々のマクドナルドに立ち寄っては、廃棄されるフライ油をもらう。彼の冒険談もおもしろいが、肝心なのは、彼がさまざまなグループにバイオディーゼルの作り方を教え、十年も前にアメリカにバイオディーゼル・ブームの発端を開いたこと。バイオディーゼル精製を始めた会社のほとんどが、彼のと同じ一段階反応の「塩基」メソッドを採用している。

最近は、ヨーロッパの研究者グループが、大規模な商業用精製機と同じ「酸/塩基」の二段階反応によるメソッドを推薦している。少量(一回の精製量1000リットル以下)バッチでバイオディーゼルをつくっているグループはみな、化学物質を取り除くために気泡によるバイオディーゼルの水洗浄を薦める。小規模な企業では、その処理後の完成品を最低二週間ほどタンク内に寝かせた後、顧客に渡す。なぜか? 出来立てのバイオディーゼルは透明に見えても、調査によると、0.1ミクロンレベルのフィルターを通さなければ、未反応の脂肪や化学物質が残っているため、ディーゼルエンジンに損傷を与えてしまうという。そうなのだ。このレベルのフィルター処理なしでも、エンジンはちゃんと動く…当面の間は。アメリカやヨーロッパなど海外の経験では、不純物を残したバイオディーゼルは、エンジンのゴム部分を溶解し、悪くするとピストン部分にコークス(黒い付着物)がたまる。「つくり易い」から、よさそうに「みえる」からと、未検査の燃料をつくってしまったのでは、結局のところ誰にとっても環境に優しい製品にはならない。

全体、バイオディーゼルのアマチュア精製者たちは、適切な仕事をするための十分な時間をなぜかけないのだろうか? それが「人間性」だろうか。みな、環境に良いことに関心があるし、その役に立ちたいと思っている。だが、ときに、良いことをしているという興奮に飲まれて、仕事そのものを中途半端に終わらせてしまったり、パッと見だけの結果に満足してしまうこともありがちだ。

私自身の同じような経験を紹介しよう。自分の使うエネルギーを自分でつくりたいと思っている人は多い。だから、けっこうな値のするソーラーパネルや風力発電機を買い、そして、多少は節約しようと「安価な」カーバッテリーを購入したりする。私も三十年前、学生の頃に同じ過ちをした。理屈としては、「ディープサイクル」バッテリーは二倍も高い、からだった。しかし、車のバッテリーは、全く異なる目的のためにデザインされたもの。短時間でスターター・モーターに大きなパワーを送るためのものであり、すぐさま車のジェネレーターで充電されるべきものだ。バッテリー上がりの状態を数回繰り返してしまえば、もう使えない。

一方、ディープサイクル・バッテリーは、よりゆっくりパワーを送り、極めてディープな状態(つまり、ゼロ・ポイント)まで、そのディープさによって、500〜1500回下がっても良いようにデザインされている。そう、カーバッテリーを使うと、システムはすぐ動かなくなり、結局適切なバッテリーを買いに走らねばならなくなり、使えなくなったカーバッテリーを捨てることになる。つまるところ、どちらのバッテリーが経済的だろう? さらにより重要なことは、環境から取り出すエネルギーという観点でみた場合、どちら「高くつく」のだろうか? 答えは明らかだ。

自然資源を活かし、製品を正しく機能させるための条件を整えていない顧客に、風力発電や太陽光パネルなど「エコ」製品を販売する「エコフレンドリー」な会社を、さまざま挙げることができる。これは、環境を保護していることになるだろうか、むしろ、資源を無駄遣いして、代替エネルギーはいまひとつだという印象を一般に与えているだけではないだろうか。バイオディーゼルに対しても、これを適切に製造しなければ、同じような印象が生じてしまうだろう。

ESIの目標は、24時間内で高品質バイオディーゼルを精製できるセミ・オートマティックのマシン製造だ。眼目は「高品質」。もっと時間がかかってもかまわない。バイオディーゼルは大規模工場では高圧フィルターを使った連続操業で、より短時間でつくることもできる。少量バッチによる小規模なバイオディーゼル精製では、より多くの注意を払い、洗浄やフィルタリング、最終製品の点検などを行って、燃料内に不要な化学物質が残らないようにしなければならない。このレベルのろ過作業には、高圧ポンプや高速遠心分離器が必要だ。

ESIのバイオディーゼル機は、「酸/塩基」の二段階反応メソッドも、より一般的な「塩基」反応メソッドのいずれも採用できるようにセッティングされている。二段階メソッドでは、より完全な反応を経て、植物性廃油からより高いパーセンテージのバイオディーゼルを抽出する。できあがるバイオディーゼルも、より中性なpHバランスになる。短所は処理過程により時間がかかること、第一段階で高濃度の硫黄酸を少量使用することだ。

一段階メソッドもオートメーション化しやすく、反応率は99.5%、6〜8時間で完全分離される。残り0.5%の化学物質やグリセリン、精製燃料から分離したメタノールを除去するために注意が必要だ。この除去作業は、燃料を二度、水洗浄して、分離を待つ。最後の高圧フィルター終了後、化学物質とグリセロールが残留していないことを産業基準で検査する。

ESIのバイオディーゼル機は、ただバイオディーゼルをつくるだけではない。グリセリンを含む残留物質の少なくとも17%から、別の反応器内の処理によって、メタノールと未反応の植物性廃油が取り出され、次回のバッチ分に戻されて再処理を待つ。メタノール分は凝縮して薬品タンクに戻される。純グリセリンは、天然の香りや苛性ソーダ、水と合わせて高品質ハンドソープになる。最初の洗浄水は、食器洗い洗剤のいち成分として利用。ほとんど混合物のない仕上げ用の洗浄水は、最初の洗浄水タンクに戻る。
処理機に入るもの)植物性廃油、苛性ソーダ、メタノール、酢酸、水。
処理機から出るもの)バイオディーゼル、ハンドソープ、食器用洗剤。

処理機に入るエネルギー)太陽熱と、それによる電力(ミキシングとパンプアップ用)、動力となるバイオディーゼル燃料、処理機自体の製作に必要だった他の資源。

肝心な問題点は・・・処理機が、他に投入されたエネルギーとのバランスがとれ、一式のユニットとして事実上のエネルギー節約装置となるには、何リットルの廃油を処理しなければならないのか。答えはまだわからないが、やってみればわかるだろう。
確かなのは、メタノール(天然ガスからつくられる)の購入をやめて、バイオマスからつくるエタノールを使いたいということだ。エタノール作りは、これからの夏のプロジェクトで、地元の酒造工場から専門家を招いて助言をもらいたい。願わくは、タヌキや、もう少し大型の二本足の動物を、アルコールから遠ざけておけるといいのだが。

「クリエーターたち」

ESIのバイオディーゼル精製機は、友人の宮脇さんと私とで、六ヶ月以上に渡って、延べ三十日を越える日数をかけて完成させた。このプロジェクトは、二人のボランティアによるもので、それ故に、二人の「余暇」に行われなければならなかった。精製機のための備品や素材はインヴァイロテック?と宮脇製作所?から寄付された。組み立て作業は全て、宮脇製作所?で行われ、今もそこに置かれている。

床面積は、縦910mm×横1820mm。日本に暮らす皆さんなら、これはたたみ一畳分と同じサイズだとお気づきだろう。「畳」という単位は、日本文化や建物の寸法の中によく浸透しているので、この装置がすっぽり一畳の中に収まるというのは、なにやら象徴的だ。バイオディーゼル精製機はキャスター付きで、小型フォークリフトで持ち上げることもでき、軽トラックでイベント会場などへ運んでデモンストレーションもできる。電気系統は全て100ボルトで操作できるので、20アンペアのブレーカーがあれば、どの電気回路にでも接続可能だ。

処理は、四つの層で行われる。上から下へ説明しよう。処理機の屋根上には、ソーラー温水器(真空管タイプ)と、温水貯水タンクが載っている。この温水は、ビルトインになっている熱交換機を通って、バイオディーゼル反応器とグリセリン反応器へと循環する。さらに、反応タンクを通過した温水は、最終の洗浄段階でバイオディーゼルと一緒になる。

第二の層は、コントロールシステム、バイオディーゼル反応器、真空薬品ポンプ。第三層は、洗浄タンク、グリセリン反応器、薬品保管エリア、トランスファー・ポンプとフィルター。最下層は、処理機の下にあたるが、長い、口の開いたタンクがグリセリンや処理水を受ける。この多層式デザインによって、ほとんどの液体が重力だけで移動する。

2005年3月現在、ESIでは、600リットル以上の植物性廃油が集まったので、四月から毎月の処理を開始し、あたたかい季節になれば、いずれ週ベースに均したい。商業事業者から直接集めた廃油を処理して、ESI会員に販売し、ディーゼル使用の農業器機に使ってもらう予定だ。石けんは会員の他、一般市場でも販売する。

さらに、このプロジェクト・リーダーである宮脇さんは、地域の住民からの直接廃油回収も組織し、空き地に廃油処理施設をつくったり、コミュニティがプロジェクトに参加するというような、コミュニティ・ビジネスのコンセプトを活用したいという興味深いアイデアもあたためている。こちらの詳細は、後日あらためて宮脇さんから。

以 上