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どうしよう
どうしたらいいのかわからない...

アイロン
アイロンかけられたらどうしよう

信じようかな
おねえさんを信じてみようかな

 

おねえさんと知り合って間もないある日、ぼくはお気に入りの木に登りました。秋になると手の形をした葉っぱが真っ赤に染まる魔法の木です。少しお昼寝をしたあと降りようとしたら、恐くて降りられません。とりあえず、Y字になったところにお座りしてどうしようかと考えましたが、ぼくは猫だからよくわかりません。結局ぼくはここで3日3晩鳴き続けることになったのです。


すぐ隣のアパートに住んでいるおねえさんが、ぼくがずっと木から降りていないのに気付き、心配して外に出てきてくれました。2階のベランダにいるおねえさんとの距離はわずか1メートルぐらいしかないのに、下を見下ろすと恐くてジャンプできないのです。

おねえさんは、ぼくを助ける方法をいろいろ考えてくれました。たった1メートルしか離れていないのだからなんとかなる!おねえさんはひらめきました。自分のアパートからアイロン台を持ち出してきました。ベランダの手すりからY字のところまでぴったしサイズで橋になります。「さあ、渡っておいで。」とおねえさん。でもやっぱり恐いのです。

それに実を言うと、おねえさんのことをまだ100%信用していたわけではありません。だって、つい先日、ぼくの自慢のひげをちょきんと短く切った人間がいるのです。ぼくの写真のひげを見てください。ほら、おひげが短いでしょ!とっても間抜けな顔に見えるでしょ。
木から降りられないのは、きっと大事なおひげが短くなったからですよ。「人間って怖いな!」とぼくはそのとき思いました。だから、「アイロン台の上に乗ったりしたらアイロンをかけられてペシャンコにされてしまう...」と思ったのです。結局その日はアイロン台に乗れませんでした。おねえさんもその夜はあきらめました。


おねえさんはまたアイロン台の橋をかけてくれています。ぐらぐらするアイロン台の橋をしっかり支えてくれています。「さあ、おいで!」おねえさんはねばりました。夜がどんどん更けて行きます。ぼくは最初の一歩がなかなか出ませんでした。でも、おねえさんのやさしい気持ちが少しずつ伝わってきたのです。ぼくの前足がアイロン台に、そして後ろ足も...慎重にゆっくり渡りました。おねえさんはぼくが渡り終わるまでアイロン台をしっかり支えて見守ってくれました。そして無事におねえさんのアパートのベランダに着地しました。ああ助かった。

おねえさんにはとっても感謝しています。それから、おねえさんがもっともっと好きになりました。
この御恩は絶対に忘れません。おねえさんに困ったことが起きたら今度はぼくが猫の恩返しをさせてください。
それに人間って悪い人たちばかりではないのですね。