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久しぶりの手紙
ぼくの家

 

 
おねえさん、またまたご無沙汰してしまいました。心配かけてごめんなさい。
ぼくは元気にやっています。とはいっても今までにいろんなことがありました。
おねえさんには本当は話したくないこともあるんだけど、全部話します。

最初はすべてが順調でした。ギャルソンとして生活費をなんとか稼ぎながら、ソムリエの修行を続けていました。ちゃんと準備をしてソムリエの試験を受けたつもりでしたが結果は不合格でした。

それからぼくは落ち込んでしまって、仕事もせず、修行もせず、何もしない日が続きました。もう、ソムリエになることは考えていませんでした。そのうち家賃が払えなくなってアパルトマンを追い出され、放浪の旅に出ました。ぼくの毛並みからつやは消えていました。もう身だしなみなんてどうでもよくなっていました。おねえさん、ぼくのそんな姿、想像できないでしょう。

そんなぼくを救ってくれたのが昔からのぼくのお友達、ノートルダム寺院のガーゴイルたちです。
しばらくガーゴイルたちからも遠ざかっていたのですが、たまたまノートルダム寺院の近くを通りかかったときに声をかけてくれたので、いろいろお話を聞いてもらいました。ガーゴイルたちはぼくの変貌ぶりにびっくりしていました。そして大変心配してくれました。

ガーゴイルたちは何百年も前から、このノートルダム寺院を、そしてパリの町を守るお仕事を続けています。今までにこのお仕事がいやになったことは何度もあったそうです。でもやめないで続けています。ガーゴイルたちはやっぱりこのお仕事が好きなんだそうです。
このお話を聞くと、一度失敗したぐらいで自分のやりたいことをすぐにあきらめて自暴自棄になっているぼくがとっても恥ずかしくなりました。「すぐにあきらめちゃだめ!」と言っていた母の言葉も思い出しました。

ぼくは徐々に立ち直っていきました。今は元のギャルソンの仕事に戻り、ソムリエの勉強をもう一度最初からやり直しています。そして、今はガーゴイルたちといっしょに住んでいるんですよ。 いつソムリエになれるかまだわかりませんが、もう一度頑張ってみるつもりです。

というわけで、ぼくは立派なソムリエになるまで日本に帰るわけにはいきません。 そこでおねえさん、ぼくに会いにパリまで来てくれませんか。もちろん、あまりにも突然のことなので、すぐに来てもらえるとは思っていません。でもおねえさんに少しでも早く来てもらえるように、パリがどんなにいいところなのか、ぼくの生活を中心に紹介していきたいと思います。