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ダービー ペアの壺 (1780年頃)
A Pair of Derby Vases Ca.1780
チェルシー・ダービー期のペアの壺。カップ型の胴体に細い首と脚がつく。本体は肩までで、首から上全体が蓋になっている。本体の両脇にはサテュロスの頭部があり、その上にループ状の取っ手が付けられている。本体の肩と下部、それに蓋の頂上部と台座に葉模様の装飾がある。蓋先端には本来つまみがあったはずだが、損傷した後につまみなしの形で修復されたものと見られる。本体両面に風景画が描かれている。
台座裏面には"No 60"と壺の型番が刻み込まれている。この型番は1774年頃には導入されていたと思われるが、同年のロンドン店舗カタログには本品と同様の形状の壺は見当たらない。ちなみに、この60番の他の作例としては以下のものがある。
http://www.christies.com/lotfinder/lot/a-pair-of-chelsea-derby-two-handled-urn-shaped-vases-4113277-details.aspx?from=searchresults&intObjectID=4113277&sid=29f83f51-2a4d-4e64-9f87-9000fc3801eb
絵付けの風景画は、川辺の町の建物や人物などを描いたものである。チェルシー・ダービー期には、壺の胴体に楕円枠を設けた上で、片側の枠内に風景画を、もう一方の側の枠内には人物画を描く例が多いが(ダービー(D2-14)、ダービー(D2-19)及びダービー(D2-20)を参照)、本品では壺の胴体の両側に、しかも枠がなくて全体に広がる形で風景画が描かれている(ダービー(D2-37)及びダービー(D2-45)を参照)。
また、本品に類似した風景画の作品(おそらく同一の絵付師によるもの)として、以下の作品(同一作品が下記Mackennaの著書にも掲載)がある。
https://www.bonhams.com/auctions/18424/lot/292/
この風景画がどこで誰によって描かれたかについては確たる論証はないが、デュズベリー経営下の旧チェルシー工場で、あるいはロンドンの独立絵付け工房で描かれたと見られており、絵付師としてはザカライア・ボアマン(Zachariah Boreman)やフィデル・デュヴィヴィエ(Fidelle Duvivier)の名前が候補として挙げられている。
高さ(Height):24.5cm
マーク:台座裏面に刻み込みの"No 60"及びパッチマーク。
Marks:"No 60" incised on the bottom of the base. Patch marks on the bottom.
参照文献/References:
- Stephen Mitchell "The Marks on Chelsea-Derby And Early Crossed-Batons Useful Wares 1770-c.1790" pp.45-46 and Plates 28-29
- The Chelsea Society "Chelsea China from Private Collections" (Exhibition Catalogue) Item 128 (p.21 and the Back Cover)
- F. Severne Mackenna "Chelsea Porcelain The Gold Anchor Wares" Plate18 Fig.33
(2017年7月掲載)