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ダービー 172番図柄皿 (1794-95年頃)
Derby Dish with Pattern No.172 Ca.1794-95



 

 

 四角い深皿の中央にバラやヘアベル(harebell)などの花絵が描かれ、それを金、ピンク、青、緑による円枠が囲んでいる。縁模様はそれらの色にさらに紫まで加わり、かなり手の込んだ、ややうるさく感じるほどの模様であるが、全体的に見るとバラのピンク、ヘアベルの青、葉やつぼみの緑とうまく釣り合いがとれて、統一感のある図柄となっている。

 ダービーのパターン・ブックのデザート図柄172番は、図柄の脇に「四角いコンポートに描かれたビリングズレイによる花束」と記述されており、明確にウィリアム・ビリングズレイ(William Billingsley)に割り当てられた図柄の一つである。本品の花絵は、パターン・ブックに描かれている図柄と花束の構成までそっくりであり、四角皿であるという点とあわせて、パターン・ブックの記載を忠実に反映した作品となっている。また、本品の金彩はトマス・ソア(Thomas Soare)が担当している。(ダービー「D3-1」ダービー「D3-4」ダービー「D3-11」ダービー「D3-13」「コラム11」を参照。)


 172番図柄は、ビリングズレイが手がけた図柄として有名であるものの、残存する作例はほとんど知られていない。数少ない例が、20世紀初期の研究者フランク・ハルバット(Frank Hurlbutt:「耳寄り情報」2006年5月4日の欄参照。)がかつて所有し、現在はヴィクトリア&アルバート美術館に収蔵されている水差しと水盤(Toilet Ewer and Basin)である。ただし、この作品では中央に多様な花が豪華に描かれており、本品とは印象を若干異にしている。

サイズ(Sizes):22cm x 22cm x 4.5cm(H)

マーク:裏面に暗褐色で「王冠、交差するバトンと点及びD」並びに「172」。そのマーク右上角の高台内側に暗褐色で数字の「1」。高台内にアルファベットの「B」の刻印(陰刻)。
Mark: <Crown, CrossedBatons&Dots and D> and numeral <172> painted in puce on the bottom. Numeral <1> painted in puce on the foot rim at the corner right above the mark. Impressed <B> inside the foot rim.

参照文献/References:
- Frank Hurlbutt "Old Derby Porcelain And Its Artist-Workmen" Frontispiece, Plate19, Plate20
- Franklin A. Barrett & Arthur L. Thorpe "Derby Porcelain" Colour Plate E
- W.D. John "William Billingsley (1758-1828)" Illustrations 23 and 43B
- Derby Museums and Art Gallery "Derby Porcelain Pattern Books Nottingham Road Period"

(2009年10月掲載)