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ダービー 「いるか」のクリーム差し (1785年頃)
Derby Dolphin Ewer Ca.1785

 

 

 

 

 一般に「いるかのクリーム差し(Dolphin Ewer)」と呼ばれている作品の典型例である。ダービーに特徴的なスクロール型の取っ手がつけられている。同型のダービー「D2-3」と比べると、一回り大きなサイズとなっている。絵付けは、同じく多色エナメルの花絵であるが、本品の方がはるかに丁寧に描かれている。(ダービー「D2-12」及びロウストフト「LT1」参照。)
 この作品で注目すべき点は、何と言っても、裏面に赤で数字の7が記されていることである。7番は、絵付け師William Billingsley(ダービー「D3-1」ダービー「D3-2」ダービー「D3-4」ダービー「D3-13」ダービー「D3-14」参照)の番号であるが、実際にこの番号が記されている作品は多くない。7の下部分が長く伸びる"long-tailed 7"と呼ばれる、彼独特の記し方で、一般に赤で記される。多くの場合、ダービーのバトンマーク(暗褐色)と合わせて記されるが、本品と同じく7だけでマークのない作例も知られている(いわゆる「Rode Collection」)。なお、Billingsleyは修行期間を経て、1779年頃から本格的な絵付け師として活動を開始し、1795年までダービーに在籍している。
 Dolphin Ewerは、1760年代後半から70年代に多く作られたが、80年代に入ってからも製造されたとされる。一方、ダービーで金彩師/絵付師番号の使用が始まったのは、バトンマークが導入された1784年以降のことである。縁どりが金彩でなく茶色であるのも、一般には1760〜70年代を想起させるが、1787-88年に作られたと記録されている上記Rode Collectionの作品も、茶色の縁取りである。(なお、Rode Collectionには、1760年頃のチェルシー作品も含まれており、ダービーの作品は、形状や図柄が類似していることから、これらチェルシー作品の補充だと見られている。)
 本品の絵付けがBillingsleyによるものであると断定することは難しいが、花の描き方が彼のスタイルであることも踏まえ、Billingsleyの初期作品である可能性は十分にあると考えられる。
マーク:裏面に赤色で数字の7(ダービーのバトンマークはなし。)
Mark:Numeral 7 painted in red on the bottom (No Derby crossed batons mark)
高さ:9.5p(取っ手最上部まで)
Height:9.5p (3 3/4 in) to the top of the handle
文献/Literature (on the "Rode Collection"):
-Twitchett "Billingsley at Rode Hall" Antique Dealer And Collectors Guide, November 1998
-Twitchett "Derby Porcelain 1748-1848 An Illustrated Guide" (2002) pp26-27 and Colour Plate 5