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2004年 冬

 ESIの拠点である駒ヶ根市は、ネパールを代表する美しい観光都市ポカラの姉妹都市です。 ESIのダグラス・ファーは二十数年前にカトマンズのチベット寺院に寄宿したのをきっかけに、 頻繁にネパールを訪れ、五年前から温泉の湧く村タトパニで、 SCDC(サスティナブル・コミュニティ・デザイン・センター)を支援しています。 昨年は、タトパニ村のロッジで働いていたゴパール・グルンさんが、 SCDCの未来のマネージャー候補として、三ヶ月間、駒ヶ根市のESIランドにホームステイをしました。 2004年冬の活動を報告します。

 
 

タトパニ村のSCDC

 


      ※ tato = hot , paani = water … タトパニ = 温泉

 タトパニ村は、夏にはその水が黒くなるというカリ(黒)・ガンダキ川沿いに、標高7000mを超えるニルギリ山を臨み、良質な温泉を目当てに多くのトレッカーが足をとめる村です。冬季(乾季)には、オレンジがたわわに実る明るく、過ごしやすいところです。

 タトパニ村のNGOサスティナブル・コミュニティ・デザイン・センター(SCDC)は、地域の大地主であり、ダルギリロッジのオーナーであるブーワン・ガウチョン氏を相談役に、もう一人の地主、タカリ族プルナプラサード・トゥラチャン氏を理事に迎え、1999年から活動を始めました。

 SCDCは、もともと自給自足の生活をしていたこの地の人々の伝統を守りながら、同時に、語学やコンピューターなどを取り込む彼らの進取的な精神をより活かして、恵まれた天然資源による「持続的な(サスティナブル)ビジネスや生活の技術習得の場」の提供を目標にしています。

  村の背面にあたる山を十五分ほど登ると、ラムドアースによるセンターの一階部分の壁や、小さな段々畑の基礎が見られます。
 残念なことに、昨春合意されたマオイストと政府との停戦が、半年後の秋には破られたため、この冬も、校舎本体の建設は進めないこととしましたが、
(1) 温室の完成→オンシーズン(秋〜春)に村のロッジに提供できるトマトの試作
(2) チキントラクターのトライアル実施
を、SCDCの今期の二大課題としました

 以下、昨年の活動のその後です。

A) 村の公立小学校に建設したトイレ…恐らくネパール初の「リビングシステム」を導入したこのトイレ(詳細は、「トイレプロジェクト」参照)、果 たして無事に機能しているのか、SCDC役員の誰に尋ねても、返答がさまざまで、今回この眼で見るまでは大きな期待と不安の種だった。
  汚水を処理する植物たちは、温暖な気候のため、力強く育っていた。
  だが、先生たちにお願いしていたメンテナンスの状態は…・。 やんちゃな子供が、飛び込んだボールを取りに植物を踏み荒らしても、窓から放り出される紙くずが排水パイプを詰まらせても、あるいは、心ない人々が、個室の鍵を盗ってしまっても、残念ながら、先生たちは、「ケ・ガルネ? (What to do?)」を合言葉に、なされるがままだったようだ。
  一度も掃除されたことがなさそうなトイレは、使用禁止にし、せめて、生徒たちが一度は掃除をした後で修理その他を検討することにした。

B)「橋作り」(詳細は「橋作り」参照)…カリ・ガンダキ川の向こう側にある砂を運び出せるよう、昨年川のこちら側に土台をつくり、トラスを利用した取り外し可能な橋梁部分も完成。…ところが、カリ・ガンダキ川 は、昨夏の雨季に、その姿を大きく変えていた! 川は大きく向こう側に流れを寄せ、橋の土台は、川原に孤島のようにぽつんと残されている。おまけに、今年はこちら側に良質の砂場ができていた。
  ということで、橋プロジェクトは中断。
  橋梁のトラスは、SCDCでいずれ風力発電を取り付ける際のポール代わりに再利用、砂は来年の建設作業 分までたっぷり袋詰めして、ミュールたちにSCDCまで運んでもらい、コンクリートの土台は、カリ・ガ ンダキ川に捧げるプジャ(お祈り)用の祭壇にしてもらおうか…となった。
  ちなみに、今回の川の流れの変化で、数年前に川底に埋もれたもう一つの温泉源が、再び地上に現れた。地   主のロッジ・オーナーには、温泉源を守るために堤防をつくるよう勧めたが、果 たして、今年のカリ・ガンダキ川はどれほどおとなしくしているだろうか…。

 今年度の報告については、「ネパールの活動レポ」「ネパール日記2004」をそれぞれご覧下さい。