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ネパール日記
 

 私が毎年冬の三ヶ月をヒマラヤ山脈にある小さな村、タトパニ村で過ごすようになって五年になる。タトパニとは日本語で「お湯」という意味で、チベットとインドをつなぐ古い「塩の道」でもある、名高いジョムソン・トレッキング道沿いにある。標高1200メートル程だが冬は温暖で、実際、ESIランドより遙かに暖かく過ごすことができる。北緯27度辺りにあるタトパニの冬は、四国よりもやや暖かく、新鮮なミカンやオレンジ類が豊かに実り、毎日摘んでは食べることができる。もちろん、毎晩すばらしい温泉に浸かれることもここでの生活のお楽しみである。およそ五年前、私は、当時駒ヶ根市に準備しつつあったのだが、日本に環境学校を創るには、当初考えていたよりもはるかに多くの時間とお金とインフラが必要であることに気が付いた。そして、二十三年前に日本に来る前にネパールに暮らしていたことがあった私は、いつか教育者としてこの国に戻ってきたいと思っていたのだった。

 ネパールの人々は勤勉で、思いやりある暖かい心根を持ち、自分たちがもっているもので手早く間に合わせることができる一方で、常に新しいことを学びたいという情熱も驚くほど強くもっている。十八年前に訪ねたことのあるこの小さな村で、村の年輩者たちからなる組織的な助けを得ながら、「サスティナブル・コミュニティ・デザイン・センター」というNGOを設立した。その目的は駒ヶ根で計画しているテクニカル・スクールと同じだが、ネパールに導入しようとしているテクノロジーのほとんどが「先進的」であるという点で異なっている。つまり、日本のような先進国とは違い、ネパリたちには、既に築き上げてしまった巨大な社会的、科学技術的インフラを解体させてから、より良い生活のために一層シンプルで適切な技術を導入するという必要性はないからだ。彼らは、依然として無駄 のない伝統的な生活を送りながら電気や電話、より良い教育、より良い住宅などが供給される日を心待ちにし、自然農法の利を活かし、家族単位 の社会的機構を発展させている。つまり、昭和初期の日本を思い浮かべてみればいいだろう。ここ三年ほどの間に急増したコンピューター学校は当時の日本にはなかったけれども。

 ネパールの多くはいまだに、主に足で歩くことでしかアクセスできない僻村であり、環境被害のほとんどは、皮肉なことに観光客と直接関わる地域で起こり、彼らが訪れる都市では大概な環境問題を抱えている。二十世紀でもっとも顕著だった被害は、観光業のために切り倒された膨大な量 の木々だった。燃料としての利用だけでなく、建設ブームも拍車をかけた。大規模な浸食が起こり、農地も失われたが、地域の人々こそがその土地の森林をよりよく手がけることができるだろうと考え、中央政府は、木の苗を供給して二十年前に大規模な植林キャンペーンを始めた。このキャンペーンは、保存地区を設定したり、ロッジでの調理用にプロパンガスの使用を奨励したりすることと平行して、一帯の森林を多く取り戻すことに貢献している。

 昨年、私たちはラムド・アースと呼ばれるある「先進的」な技術を紹介した。同じ年、ESIセンターで作ったラムド・アースによる壁を覚えている人もいるだろう。基本的には二枚の丈夫な型の間に、土70%と砂と砂利の混合物30%、それに2%のセメントを混ぜたものにわずかな湿気を与えて、打ちたたいていくと、安価で美しく頑丈な壁ができあがる。ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアでは多くの建設会社が使用しているテクニックだ。ネパールでも乾燥した地域では川の沈泥を使って同様の手法を既に活かしているが、その技術はあまり科学的とは言えず、多量 の雨に対する耐性はない。SCDC(サスティナブル・コミュニティ・デザイン・センター)では、そのセンターの一階にあたる壁作りを始める前に、地域の人々に、サンプルの分析の仕方、選び方、混ぜ方、打ちたたき方、テストの仕方などを教えた。壁は美しく、コンクリートと変わらない強度に仕上がった。爪で壁を引っ掻いてみれば、爪のほうが欠けてしまう。

 1ヘクタールのSCDCセンターの土地にはさらに、段々畑も作り、今のところオレンジやレモン、ミカンの木が合わせて三十本ほどと大豆やライ麦が植えられている。もちろん、土の表面 にはマルチを施すことの重要性を、ESIランドの畑同様にポイントにしている。

 現在までのプロジェクトは全て私が出資している(建設経費は日本の十分の一)が、いずれ村レベルのビジネスによる利益を通 じて、センターが自立することを期待している。

 SCDCは、生徒たちにサスティナブル・コミュニティ・デザインの基礎を教えるための技術学校として設立されたが、今年はセンターの建設を中断し、村に直結したプロジェクトを二、三手がけることにした。

 アース・スチュワード・インスティテュートとSCDCの間には今、正式なタイアップをする機が熟したところだ。ネパール人学生の日本留学の支援もできれば、ネパールに学生や教員を送ることもできるだろう。

SCDCプロジェクトに関する詳細は次を参照してください。

   
 
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