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この冬のネパールには、妻も同行し、少なく見積もっても総量 40L程の機器も運んだ。今回のプロジェクトは、小さなミネラルウォーターのボトリング工場を作り、ジョムソン・トレッキング・ルート沿いに位 置するタトパニ村の周辺を埋めつつある使い捨てペットボトルの使用を根絶することだった。が、このプロジェクトは、必要なスタッフをトレーニングし、適当なガラス瓶を手に入れ、ラベルを印刷できるまで待つことにした。それに、村の学校にトイレを作る手伝いをしたいというのは、我々の念願だったことで、なぜなら、彼らは、遠く離れた、しかも決して満足とはいえないトイレを使っていたからだ。 数年前に村の学校が改築され、大きくなったときに、私は、校庭や教室の清掃をきちんとするのなら、トイレのデザインと建設資金の提供をすると約束した。その後、校庭はほとんど掃除されたこともなかった(せいぜい、私や村の重鎮たちが学校に来るときだけ)が、とにかくトイレプロジェクトを進めることにし、以前に一緒に仕事をした五人の地元男性を雇った。二月初旬に建設開始、三月の第一週目に完成した。 三つのトイレ便器と男性用小用便器は、大変シンプルな仕掛けで、それぞれのトイレから排泄物はU字吸管を経て、コンクリートで補強された(バクテリア利用による)浄化槽までパイプ管を通 して運ばれる。仕事は概ねスムーズに進んだが、必ずしも製図どおりというわけではない。ネパールからは柔軟さと融通 することを教えられたが、ネパールでの一般的なやり方から逸脱しているアイデア(その殆どは私の案だったのが・・・)には、現場監督が必要だった。浄化槽作りについては、それが絶対に漏れないようにする、ということが大きなチャレンジだったが、村の人々には、水漏れテストの際、コンクリートタンクの「ほんの数カ所からほんの少し」水漏れしたことに私が大騒ぎした理由がわからなかったようだ。トイレは村の本道脇、地上三メートルのところにあるのだから、衛生面 への懸念は彼らにも明らかだと私は思っていたのだが・・・。 建設スタッフたちは、石壁を作るとなると素晴らしく優秀で、ひとつひとつの石を美しく刻んで形を整え、積み重ねていくために膨大な作業量 を費やした。トイレを取り囲む壁は美しく、その中にある浄化槽はもちろん、もう水漏れしない。水漏れがあるとおぼしき怪しい箇所を埋めるには、ネパール式に赤土を用い、その上からさらに壁土を重ねた。 浄化槽の内部にはさらにユニークな特徴がある。タンクを水で満たす前に、小さな穴をあけたホースを底に沈め、タンク内に空気を送れるようにした。小さな石を重石にしてそれを沈めた後、500個のペットボトルを輪切りにして水面 に浮かべた。教員は、毎週五分間、ポンプでタンク内に空気を送ることになっている。こうすれば、ペットボトルのリングに棲みついている好気性バクテリアに酸素が供給される。急速にその中身を分解する浄化槽は、漕内にたっぷり酸素があればより早く機能するのだ。さらにタンクは、背面 の壁から屋根まで延びているパイプから排気もされる。 タンクをでた汚水は、「リビング・フィルター・システム」を通 るのだが、これは私が知る限り、ネパールでは初の試みだろう。このフィルターは、防水したライナー内に小石を150B厚に敷き、砂混じりの土を5B厚乗せ、そこに湿地性植物を植えて作った。ESIのアドバイザーでもあり、友人でもあるジョン&ナンシー・トッド夫妻をご存じの方は、この植物フィルターを使った彼らの研究を聞いたことがあるだろう。二人は、ある種の植物が空気を取り込み、その根まで運ぶことができることに気が付いた。根に付いている好気性微生物が汚水を分解すると、これを植物が必要な養分として取り込む。さらに、二つの男性用小用便器は、浄化槽を通 らず、直接このフィルターシステムまでパイプでつながっている。こうすれば、浄化槽内の窒素量 を削減して、浄化槽の機能を損なわない。 浄化槽をでた汚水は、雨水と一緒に砂利の下を通 るため臭いもでないし、ハエなども来ない。フィルターは幅2m×長さ10m。フィルターを出てくるのは、BOD(生化学的酸素要求量 )6〜10レベルのきれいな水だ。この水は、道路の下に掘った幅2m×長さ2m×深さ1mの浸透用ピットに入る。リビングシステムの端にはカンナユリも植えた。今頃はシステムがきちんと働いて、子供たちは校庭をずっときれいに掃除しているはずだ。もっとも彼らの姿勢を変化させることができたのかどうか、あまり自信はないが。今年、校長には、「地元出身者」が新しく採用され、彼は学校に誇りを持っている。子供たちもそうだ。しばらく様子をみることにしよう。 |
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