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■すべての基本は陰と陽である
韓国の国旗「太極旗」は、宇宙の二大要素である「陰」と「陽」が万物を栄えさせるという法則を表現したものです。白地の中央部に赤と青が巴形に組み合った太極があり、周囲には易経の卦で示された天・地・日・月が配置されています。世界の根源である太極の形は、陰と陽のバランスが最高の状態で保たれている様子。つまり、世の中のあらゆる生命事物は、陰陽の働きによって鮮やかに育てられていくのだと、この国旗は歌いあげているのです。
一方で、暮らしのなかの韓国の色彩は、極端なコントラストを見せるといわれます。日本流にいうなら、ケの色とハレの色の大きな落差です。ケ、つまり日常の色は生成または白。ハレ、つまり祝いごとや祭りの色は、古代中国から伝えられた陰陽五行の色。はでやかな色の饗宴です。五行と照合する五色、それは「木=青」「火=赤」「土=黄」「金=白」「水=黒」です。
インドやフィリピンをはじめアジアの全域で、生成や白は庶民の日常着または労働着として愛用されてきました。しかし、とくに朝鮮民族は白を好み、田んぼや畑でさえ白の着物で働くのでした。ある研究家によると、それは、ある時期に、黄、紫、灰、紅、青、緑、黒の七色を庶民が用いることが禁じられたためだといいます。残っているのは、生成または白しかなかったのです。つまり、白は悲哀の色だと。
しかし、別の研究家は、朝鮮民族が白を好むのは古代の太陽信仰に由来するものだと主張します。それは迫害とか受難とかには関係のない前向きの選択であり、ひたすら「白は明るい太陽を象徴する素晴らしい色」なのであり、まさに朝鮮民族にふさわしい色なのであると。ついでながら、韓国語で「白水」というのは「清廉潔白」を表わす言葉です。
■赤い旋風の震源地
韓国全土が赤く染まりました。サッカーのワールドカップ日韓大会で韓国は日本を超える好成績を挙げ、みごと4位
の座を獲得しました。予選リーグから決勝トーナメントまで、韓国の赤い軍団は世界の強豪チームを相手に連戦連勝。韓国イレブンの名は「アジアの虎」から「赤い旋風」に変わったのです。その間、韓国各都市の街頭は赤いTシャツのサポーターで埋め尽くされました。
ごくしぜんに思い起こしたのは、呉善花さんの日韓比較文化論『ワサビと唐辛子』(祥伝社)です。「ワサビでは辛さを抱きかかえるようにして身を閉じるが、唐辛子では、辛さを発散させようとして身を開く。ワサビは、辛いという体感を内部に受け入れさせようと働き、唐辛子は辛いという体感を外部に出させようと働く」――。例えば釜山総合スタジアムの座席は、赤、青、黄、緑、朱、ピンク、水色、白の8色に塗り分けられていますが、試合当日はゲームが始まる前から唐辛子色一色。赤いTシャツのサポーターで満席になったというよりも、観客席が唐辛子で満たされた感じだと、そんなレポートもありました。
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■裸形のような白
こんな唐辛子現象に対するメディアの論評では、真面
目な論調というか、正調テキスト的ともいえる指摘がめだちました。それは「もともと韓国を象徴する色は青磁と白磁の色なのに」というものです。それは、わかっているんですよと、あちこちから、そんな声が聞こえてきそうでしたが。
朝鮮陶磁の美しさ。それは、高麗の青磁、李朝の白磁に集約されるといわれます。金属器、土器、石造品、漆器など、古代から長く継承されてきた多くの優れた伝統工芸品のなかでも、青磁と白磁にまさるものはないとされてきたのです。高麗は西暦936年に新羅と後百済を併合して朝鮮半島を統一した国。李朝は高麗のあと1392年から実質1800年まで続く李氏朝鮮のことです。
ともに言葉では言い表わしにくい色の深さ、美しさ。青磁は鉄分のある青緑色の釉薬をかけて焼いた磁器です。文様がほどこされているものが多いのですが、少し離れるとめだたない繊細な景色。大阪市立東洋陶磁美術館のパンフレット『東洋陶磁の展開』(大阪市美術振興協会)には、それは「釉色の美しさを損なうまいとした配慮であろう」と記されています。
一方の白磁はカオリンと呼ばれる粘土を素地原料とし、透明な高温度用釉薬をかけて焼いた磁器。宋の時代(960〜1279)の白磁が卵白のように白いのに対して、李朝の白磁は「わずかに青を混じえた半透明な乳白色」とされます。日本の代表的な陶芸家、富本憲吉(1886〜1963)は李朝白磁に心酔した人でしたが、いっさいの装飾的要素を排除した白磁の美しさを「人間でいえば裸形の美しさ」(韓永大『朝鮮美の探究者たち』未来社)と評しています。
幽玄の趣きさえある青磁や白磁の色と、韓国全土で燃えさかった熱狂の赤。胸に浮かぶのは「だからこそ」という感慨ではなかったでしょうか。抑えるものがあるからこそ、激しい燃え方もあるのでしょうから。
日本ペイントは、アジアでは中国のほかに、台湾、韓国、マレーシア、ベトナム、シンガポール、タイ、香港、フィリピンに合弁会社を設立していますが、とくにアジア第2の自動車生産大国である韓国を重要な市場として注目しています。1996年には大韓オートモーティブ・コーティング社(のちにDAC社と改称)を設立、また、1977年にはニプシーケミカル社を設立しました。
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