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●Accuphase STEREO INTEGRATED AMPLIFIER E-308

Accuphase E-308写真

スピーカーが新しくなると、アンプが見劣りして感じるもの。実際筆者が使ってきたのはアンプはSansuiのAU-D607X DECADEと言う20年近い年代物。解像度やドライブ能力の点で新しいアンプには遠く及ばない。そろそろ更新すべき時期には違いないのだが、誰も彼もがAVに走る昨今。数の出ないピュアオーディオのアンプは、同じ価格帯のアンプで更新したところで、当時の品質を現代風にリファインしたものを手に入れるのは無理なようだ。しかしちょっとまともそうなアンプは10万円を軽く超えるような価格で、更新にちょっと躊躇していた。

筆者はアンプなんて低ひずみで、ドライブ能力と周波数特性が優れていれば、音はスピーカーで作ればいいという主義。いっそのこと業務用のアンプにちょっとしたミキサーかませてコントロールしようとも考えたのだが、これもまずいと気づいた。基準がないではないか。それでなくとも筆者の再生環境はRME Hammerfallを使ったPCからの再生。さらにアンプまで変則技を使うと、ちょっと間違うといつの間にか変な音を聴き慣れてしまう恐れがある。

結局ちゃんとしたオーディオ用のアンプを買おうと言うことで、一通りの製品情報を仕入れてターゲットを絞る。感触的には20〜30万円クラスのAccuphase・Luxman・marantzと言った国産メーカー。もっと本格的なものならともかく、この価格帯では下手に海外物に手を出さない方がいいだろうという判断だ。再びFayrayのHourglassを持って日本橋に出かけた。今回はちょっと趣向を変えてナニワ電業社。

・聴き比べると確かに音は違うが・・・

今回は家で使っているスピーカーJBL Control Monitor 4318が店頭にあるから、一通り聴き比べたらすぐ決まるだろうと高を括っていたのだが、かなり苦戦した。marantz(PM-14SAver.2)の透明な音、Accuphase(E-308,E-213)のちょっとキラッとした微妙に響く音、Luxman(L-507f,L-505f)のちょっと空気感のある音。確かに違うけど、この程度って部屋の反響具合ですぐ変わるじゃないか・・・。

音質的には飾り気がなく素直な(悪く言えば面白くない)PM-14SAver.2がいい感じだったのだが、妙な色といいデザイン的に気に入らない。これではいくら安くてもかなり引いてしまう(店員も安くてうれしくなさそうなので「面白くない」と言うことで話を合わせた)。何となく音質的に無難な線でデザイン的にも気に入ったE-308かなと思って値切りまでしたのだけれど、その場で決め切れなくって、店員さんに嘘を言っていったん引き上げる。他の店とか覗いたり、中古CD探したりしながらも、色々考えたあげく銀行に行って27万円下ろした。それでも最後の決心をするためにまた嘘言って、もう一度聴かせてもらう。

今度はE-308をベースにAccuphaseの3機種で聞き比べ。ちょっと元気だけど解像度が低めのE-213(20万円ってなんか高くない?新製品だから?)、低音がしっかりしてさらに解像度が高いE-408(予算オーバー)、結局のところ解像度も充分でそれなりに落ち着いた音のE-308で手を打つことにした。ただ、電子工学的に考えた場合、このへんの音作りはアンプの価格にあわせて行われている※注のが見え見えで、ちょっと不信感を持ったのも事実である。
※注:この辺のクラスのアンプでは、電力的な面を除き同じ音にしようと思えば十分できるだけの品質の半導体や材料を使っている。それでもメーカーや機種で音が違うのは、そういう音作りをしているからで、そのへん騙されてはいけない。

Accuphase E-308写真
ラックに収まったAccuphase E-308。巨大なトランスを初めとしたしっかりしたパーツのせいで重い。その分作りもしっかりしているし、操作も好感触。何よりデザインが美しく、上品なパワーメーターが高級感を醸し出す。細かな操作スイッチはカバーの中だが、設定を示すLEDがメーターの下に点灯する配慮もいい。下の青いのは1UハーフラックサイズのHammerfall RPM。実用重視のプロ用の機器との対比が面白い。

・他社と違うレコーダーの扱い

次の週末に届いてさっそく聴いてみる。Hammerfallをレコーダー扱いで接続して、PCから音を送るが・・・Hammerfallに接続したヘッドフォンでは再生しているのにスピーカーからは音が出ない。今になってから気づいたのだが、Accuphaseはレコーダーだけ他のソースとは別扱いで、入力セレクタで選択できない仕様になっている。これって、ちょっと筆者向きではないと思ったけれど、よく考えたらいつもHammerfallから再生するのだから、常にレコーダー再生にしておいて、入力セレクタを他のソースを使うときのセレクタにすればいい。ちょっと変則だけれど、筆者の使い方が変則だからやむを得ないだろう。

・圧倒的な解像度とちょっと気になる高音

肝心の音の方は、低音の締まりがよくなり、全体的な解像度が相当上がっている。その分音源の仕上げの優劣がかなりわかるあたりが恐ろしい。悪く言うと粗が見えすぎる感もあり、もっと気持ちよく鳴らして欲しい人もいるだろう。音源によっては高音の微妙な色づけが耳につくことがあり、ツィーターのアッテネーターを何度か入れてみたりもした。スピーカーとの相性もあるだろうが、このへんもう少し素直な特性でもいいような気がする。リモコンで入力セレクタとボリューム操作ができるのだが、正面から左右30度と相当指向性がある。

総合的に見て、まあ価格が価格だから、この程度の音質や操作性は当然。まともな国産メーカーであることの信頼感や落ち着いたデザインに価値を認められなければ、海外物などにもっといい選択があるだろう。筆者的にはこの程度の品質のものが10万円台で売っていて欲しいと思うのだが、ピュアオーディオの衰退が激しい今となっては無理な相談なのだろうか? (Jun.12.2005)

・刺激的な音が減ってきた?(Jun.26.2005追記)

この子が来てから2週間になる。暇があれば聴いている状態だが、聴き慣れたのか、部品の特性が微妙に変わったのか、音が丸くなった。というか、刺激的な音を出すことが減ってきたような気がする。この手の製品はエージングくらいしているだろうし、音が変わることはあまり考えられないのだけれど、いい方向だからまあ深く考えるのはやめよう。

それよりもこのAccuphase、クラッシック鳴らすととてもいい。クレーメルのバイオリン※注の音色に聞き惚れてしまった。同じJBL 4318をSansuiのAU-D607X DECADEで鳴らしていたときはそんな感じはなかったから、これはこのアンプの特性だろう。いやはや録音がいいせいもあるのだろうが、やはり価格相応にいい音してますねぇ。
※注:FELIX MENDELSSOHN "Concert for Violin and Piano・Violin Concerto in D minor" Gidon Kremer/Martha Argerich/Orpheus Chamber Orchestra (F00G 20383 DEUTSCHE GRAMMOPHON)

続編でパワーアンプ部分を改造してみたので興味のある方はどうぞ。

■関連情報 AudioVideo用PCの製作 RME Hammerfall DSP RPM JBL Control Monitor 4318
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Accuphase STEREO INTEGRATED AMPLIFIER E-308(その2:改造編)

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