PC/AT互換機 ハードソフトをレビューするMattHomePage

●JBL Control Monitor 4318

PCで本格的に音楽を聴くようになって、半年強。15年ほど使い続けているオーディオ機器の貧弱さが気になって、更新を検討してきた。何より気になるのはスピーカー。DENONのSC-700という当時としてはいい鳴りっぷりのものなのだが、何せウーハーの口径が20cmの2ウェイのブックシェルフ(当時のはやり)とあって、あまりにも低音が貧弱。ボーナスでたら買うぞなんて思いながら、仕事が忙しくなったのと、音源(CD)を集める方に力が入っていたせいもあって、遅れに遅れて3月の連休に動いた。

以前から色々なメーカーの製品情報も集めたりもしていたが、色々理屈を書かれても聴いてみないとわからない。買う気もないのに試聴させてもらうのも気が引ける。結局その場勝負だと思って、いつも聴いているFayrayのHourglassを持って日本橋に出かけた。前回のスピーカーでもお世話になっているシマ無線。

JBL4318写真・トールボーイの低音ってしまりがない・・・

予算「10〜20万」なんてデタラメを言いながら、「ボーカルメインのクラッシックも」と伝えて、お勧めのものを聴かせて※注もらう。最近の売れ筋はトールボーイ。何台か聴かせてもらったが、低音が出ているものの全然しまりがなく、鳴っているだけ。これはウーハーの口径の問題?30cmのものも試してみたくて、ダメ元で聴いてみたJBL 4318だったけれど、ベースの音がきちんと聞こえてくる。中高音域の荒れがちょっと気にはなったが、全体的なバランスが断然いい。「こっちの方が好きかもしれない。」店員さんは私の好みを読み違えていたようで、かなり戸惑っていた。筆者はボーカルを聴くにしてはちゃんとコントロールされた音が好きなタイプなんですねぇ。ここで問題は予算。1本定価15万円(税別)だから、相当がんばってもらわないと予算オーバーだ。同じタイプでJBL 4312Dも聴いてみたが、低音はいいものの肝心の中音域でさらに荒れている。トールボーイタイプで一番気に入ったものと、4318と4312Dとで何度か聴き比べたが、中高音域の荒れは若干気になるもののもう4318しかないと言った感じ。ここでまた問題・・・「スタンドいるよねぇ。」安いものも色々さがしてもらったが、メーカー純正のJS-250(定価3万円!税別)でないと高さが出ない。
※注:ターゲットに使ったのは8曲目「Look Into My Eyes」。メインのボーカルだけでなく、ベースやストリングスがちゃんと聞こえるのがポイント。

店の機密でもあるので詳しい価格交渉は省略するが、結局相当予算オーバーの20万円台かなり上の方(税込)で状態で決着した。

JBL4318写真・思ったより何でも聞けるじゃん

次の週末に届いて、さっそくセッティング。貧弱だった低音は劇的に改善し、高音も伸びやかで、筆者の好きな女性ボーカルは一層魅力的になった。クラッシックにはあまり向いていないとされるJBLのControl Monitorだが、この4318に限ってはちょっと違うかもしれない。確かに伸びやかに鳴らせるタイプではないが、ウーハーの高域を制限したせいかクラッシックでもあまり違和感がない。もちろんロック系も全く問題ない。残った問題は、試聴時にも気になった中高音域の荒れである。このままでは明快さに欠けるので中高音のレベルを上げてみたりもしたが、本質的な改善にはならない。「年代物のアンプ※注が悪いの?でも高いし、とりあえずはスピーカーケーブル替えてみるか?」(今までバイワイヤリングにはしていたものの、そのへんのACケーブルを白赤にしただけの安物だった)
※注:SansuiのAU-D607X DECADEであるが、結局6月にAccuphase STEREO INTEGRATED AMPLIFIER E-308に更新される。

・ケーブルは大事だよ〜♪(下記スピーカーケーブルに関する注意と追加情報も参照のこと)

SPK-3900Q SILVER写真結局、中高音域の荒れを改善する試みとしてスピーカーケーブルを新調した。梅田のヨドバシカメラでortofonのSPK-3900Q SILVER(写真右)。銀がコーティングされていて、シールド付きのクワッドタイプだ。シールドの扱いが難しそうだが、アンテナケーブル自作する筆者にとっては比較的慣れた作業。線が錆びると嫌なので、両端の半田メッキもしておく。クワッドタイプを買ったことからもわかるとおり、低音と中高音を分けてバイワイヤリングで配線し、シールドはアンプ側でアースを取る。

これで音は劇的に改善した。もはや中高音域の荒れはない。柴田淳の透明な声、Fayrayの艶のある声、何度も聞いたはずの曲に聞き惚れてしまうことが何度あったことだろう。微妙な息づかいが聞こえてくると、ため息が出てしまうほど。もちろん良くなったのはボーカルだけではない。バックのピアノやドラムはもちろん、ベースやストリングスの微妙な音も綺麗に分解してくる。正直これほど効くとは思わなかった。「まるで別物じゃないか。やっぱりインピーダンスの低いところではケーブルも大事なんですねぇ。」スピーカーに関しては、ケーブルを短くすることと、それなりの品質のケーブルを使うこと。面倒なのでついそのへんの線で配線してしまいがちだが、スピーカーやアンプによっては相当効果があるようなので、ぜひ試してみてほしい。

今から思えば、店頭での試聴時もアンプからスピーカーまでの距離や切り替えスイッチでかなり邪魔が入っていたはず。試聴時の中高音の荒れもケーブル問題だったようだ。

■関連情報 AudioVideo用PCの製作 RME Hammerfall DSP RPM AUDIOTRAK OPTOPlayUSB
EDIROL UA-3FX Accuphase STEREO INTEGRATED AMPLIFIER E-308
DENON CD/SUPER AUDIO CD PLAYER DCD-1650AE RME Hammerfall DSP Multiface II
ONKYO SE-90PCI Accuphase STEREO INTEGRATED AMPLIFIER E-308(その2:改造編)
RME Fireface 800

●スピーカーケーブルに関する注意と追加情報(Dec.31.2005追記)

・スピーカーケーブルに関する注意

上記「ケーブルは大事だよ〜♪」の項で、一部誤解を招くような表現があったので追記する。

筆者の購入したortofonのSPK-3900Q SILVERで、銀のコーティングやシールドに音質的な意味があるとも取れるような表現をしているが、高級感のある見栄えとそれに伴う心理的な面での影響のみで、音に影響するものとは筆者は考えていない。唯一シールドによる不要輻射の影響が減少することで、ケーブル周囲の配線への雑音混入がなくなる程度だろう。

ここで筆者が記述した音質的な向上(中高域の荒れがなくなった)に関しては、ケーブルが短くなり、単位長さあたりの抵抗値も若干下がったことによるダンピングファクターの向上に起因するものとほぼ断定してよいと思う。参考までに配線抵抗を比較してみると下記の通りとなる。

ここからは推測になるが、荒れを感じた音域を担当するJBL4318のミッドレンジ105Hは制動力の低下に弱く、影響する音域が耳につきやすいことから、それを「荒れ」と感じたのではないだろうか。

・audio-technica AT6139

上記のことから踏み込んで、さらに制動力を向上させてみた。物理的に考えても(コーン紙のより重い)制動力をさらに要求されるであろう低域への配線をメートルあたり4.25mΩのAT6139に変更、中高域への配線もSPK-3900Qをスターカッド接続にして、配線抵抗を半減した。(ここでも5mほどの長さでスターカッド接続がそれほど意味があるとは思ってはいないが、クワッドケーブルがあったのでそうなっただけ。)

得られた音はと言うと、低音の締まりがややよくなったことと、若干ではあるが中高域がさらにクリアになったこと。

アンプ(Accuphase E-308)出力端子のダンピングファクター(100)から導かれる出力抵抗(80mΩ)に加わる配線抵抗は低域で(4.25mΩ/m×5m×2(往復))42.5mΩ、中高域で(6.64mΩ/m×5m×2(往復))66.4mΩとなり、これに数mΩの接触抵抗を加えたとしてもスピーカー端子までのダンピングファクターは50〜60を確保している。ボイスコイルの抵抗やスピーカー内のネットワークを含む配線の抵抗を考慮したら、これ以上の向上はほとんど意味がないだろう。あえてバイワイヤリングをやめてスピーカー端子の高域と低域を接続し抵抗値を下げる(2.36mΩ/m)こともしてみた(ダンピングファクタは70台半ば)が、有意な差は感じられなかった。

・スピーカーケーブルに関するまとめ

以上ortofonのSPK-3900Q SILVERの項も含め整理すると、見栄えの面を除いて、スピーカーケーブルに関しては配線抵抗に伴う配線抵抗のみ音質に効く。ターゲットにする音楽にもよるが、スピーカー自体の特性が優秀であまり制動を求めない場合(特に優秀なシングルウェイの場合など)や、アンプのダンピングファクターが低い場合(真空管アンプなど)を除いて、配線抵抗に十分注意することが音を荒らさないことにつながる。筆者の環境では、100mΩあたりから音質的には十分良好になり、50mΩ近くなると、充分すぎてそれ以上の努力はあまり意味がないという感触を得ているので、参考にしてみてほしい。AT6139などの導体断面4mm2クラスの比較的安価なケーブルはこれらを実現するのに有効だが、端子によってはそのまま挿入できないこともあるだろう。この場合、スズなどでちゃんとメッキされたものなら安価なものでよい(高価なものでも接触抵抗は変わらない)ので圧着端子などを使うとよい。

matty@gol.com , (c) Copyright 2005 Yoshihisa Inagaki All rights reserved.