Hammerfall DSP Multiface IIとPCI Cardのパッケージ。巨大なパッケージを結束したRPMの時と違って最初からセット販売を意識したもの。それでも個々のパッケージの大きさは変わらない。 |
昨年夏以来の本格的なオーディオインターフェイスの購入になる。Hammerfall DSP RPM(以下RPM)のアナログ入力チャネル数の少なさに色々困っていたところへ、救世主登場。既存のMultifaceの改良版で最新のAD/DA回路搭載。アナログのレベル変更がパネルで可能になったり、ヘッドフォン端子にもボリュームが付いたりして、より完成度が上がっている。9月末発売予定が延期になっていたので、サウンドハウスに予約を入れていたものがやっと届いた。販売開始が10/12なのだが、その次の月末出荷分になる。右写真のようにまだまだパッケージも即席で、店頭に並ぶのはまだまだ先っぽい印象だ。
以前から使っていたRPMは、DJ仕様でアナログ端子がRCAだったり、フォノアンプを搭載していたりするので、とりあえずPCオーディオを始めるには都合が良かったのだが、アナログの入力チャネルは5(フォノ・ライン兼用ステレオ2、マイク1)と少なく、デジタル入出力もないので、色々な入力を使い分けようとしたりするとアンプの入力切り替えを併用する必要があって不便だった。Hammerfall DSP Total Mix™の使い勝手に慣れてしまうと、下手にアンプでコントロールするより、まとめてTotal Mixで処理する方が柔軟性があって楽だし、一度デジタル信号になってしまえば混ぜようが何しようが音質劣化がないのがいい。それで以前から同社のMultifaceや他のメーカーの機器(MOTU 828mkII、M-AUDIO FireWire 1814など)を検討してきたのだが、Multifaceは設計が古めなこと、他社はソフトの使い勝手の点で躊躇していた。そんな時に現れたMultiface IIである。10万円という価格にもかかわらず、即予約を入れた。
そんな訳で我が家にやってきたRME Hammerfall DSP Multiface II (以下Multiface II)は入出力がアナログだけで各8チャネル、通常8チャネル※注の能力があるADAT(光)が入出力各1、これにコアキシャルのS/PDIFが加わって入力は18チャネル。出力にはさらにヘッドフォンが加わって20チャネルになる。もっとも今の段階では8チャネルのADATを活用する機材はないが、HDSP 9632などと組み合わせると、PCカード上のオーディオインターフェイスとデジタルで受け渡しするなど面白いことが出来そうだ。
※注:サンプリング周波数が48KHzまでの場合。96KHzではS/MUXフォーマットで4チャネルになる。
それから、RPMの項でも書いたことだが、このHammerfall DSPは専用I/Fカードが必要だ。PCIタイプとCard Busタイプがあるが、何れも4万円ほどするので、知らずに本体だけ買うとひどい目にあう。今回購入したのは発売記念版で、PCIカードとセットの約10万円。本体だけでも10万円程度になるとのことだから、購入時には注意してほしい。
オーディオラックに収まったMultifaceII。精悍なフェイスで、デジタルの同期などしかLEDは点灯せず、控えめな点はRPMに同じ。 |
ブラッシュアップされたMultiface IIの音はどうかというと、正直言ってRPMとほとんど変わらない。Accuphase STEREO INTEGRATED AMPLIFIER E-308とJBL Control Monitor 4318で聴いてみたが、筆者の耳では聞き分けることが全く出来なかった。特性を測定してみても、圧倒的にノイズが少ないことと、バランス入出力を無理矢理アンバランスで使っている※注1せいか若干歪みの増加が認められたものの、大差ないレベル。特別オーディオにこだわりのない人なら、フォノアンプやマイク入力はないけれどチャネル数が多い便利なオーディオインターフェイスとして使えるだろう。S/PIDF入力を使ってCDプレイヤーを接続※注2し、オーディオチューンのDACを回避してノーマルなDACでの音を聴いてみるのも面白い。ヘッドフォンアンプの音質も良好で、出力インピーダンスも低く、最近の主流になっているインピーダンスが低めのヘッドフォンでも余裕でドライブする。SONY MDR-CD900STで聴いてみたが、ヘッドフォンをつけていないかのような生々しい音で、耳を疑ったことがあった。
※注1:TRSのバランス入力をキャノンコネクタに出力するケーブルを自作して(買うと異様に高いので)Accuphase E-308に接続して聴いてみた。音質的には聴いてわかるレベルではなかったが、測定すると歪みは2/3程度になっており、やはりTRSバランス出力で使うのがよいだろう。(Nov.6.2005追記)
※注2:この場合業務用のCDプレイヤーでない限りMultiface IIに同期させる手段がない。Multiface IIをスレーブにしないといけない点注意。
Multiface IIの背面。アナログが入出力あわせて16チャネルもあるからコネクタでいっぱいになる。手前の黒いケーブルはACアダプタ。その上はコアキシャルなS/PIDF。 |
Multiface IIは音楽制作用の製品だから、アナログ入出力のコネクタは1/4"TRSのバランス出力(ヘッドフォンの大きい方のプラグを1チャネルで差動で使う)になっている。普通のオーディオアンプには差動入力はないし、あったとしてもキャノンコネクタで、相互接続可能なケーブルはあまり市販されていない。筆者の場合はアンバランスでも使えるという仕様を利用して、アンバランスの1/4"TRとRCAが両端に付いたケーブル(audio-technica AT5A81)でアンプなどと配線した。RCAが使えない特殊なケーブル(例えば1/8"TRS)の場合は1/4"TRとRCAを変換するアダプタ(SONY PC-503M)を使っている。
この子はかなり熱を出す。しかもケース全体が温かくなるので、それなりの放熱量だ。メーカのWebにも書いてあることだが、ロード時の電流は12Vで1A。同社の古いPCI Cardだと電流を供給できない場合がある。ACアダプタが付いてくるので、これを常に接続しておくとなぜか発熱は減るようだ。常に接続状態にしておいて、PCが落ちてもミキサとして使えるようにしておくのもいい使い方だろう。端子密度も高いし、他の発熱する機器との隣接する配置はしないなど、それなりに放熱に注意して使ってほしい。
RPMのレビューでも述べたことだが、RME社のオーディオインターフェイスの特徴は素晴らしいソフトウェアが利用できることだ。今回あえて高価なRME社の製品を購入したのも、ソフトウェアのポイントが大きかったから。
右の画面はDIGICheckだが、左側のスペクトラムアナライザ、中央右のレベルメータ、右端のベクタオーティオスコープ(左右の位相を見るもの)。これがチャネル毎に複数起動できる。見ているだけでも楽しいが、今処理している音の情報がリアルタイムで得られることで、音源の性質まで客観的に見えてくる。しかもDSPの機能を使用しているから、CPUの負荷が僅かな点も素晴らしい。
右はHammerfall DSP Mixer。RPMと比べてチャネル数が多くなっている分大がかりに見えるが、使い方は同じ。全ての入力(上段,Input)とプログラム出力(中段,Playback)から全ての出力(下段,Output)への出力(ルーティング)が可能で、同時に出力レベル(RMS)とピークレベルを監視可能な優れものだ。そして、これらの設定を8種類まで設定しておいて瞬時に切り替えられるから、筆者のような固定した接続環境では充分すぎるくらいの能力を持っている。
もちろんミュートやソロなど、特定の音源をチェックするための機能もあるし、ある出力を入力に戻して(ループバック)録音することも可能だ。
唯一この何でもできるMixerの欠点は、設定がどうなっているのか全体が見えなくなってしまうこと。そのためのツールとしてHammerfall DSP Matrix(右下)が用意されていて、Mixerの表に出てこないルーティングまで漏らすことなく表示してくれる。
※キャプチャした右のMixerの設定とMatrixの設定は同じではないので注意。
他のメーカーの同等品に比べて割高だが、追随を許さないソフト品質などの点で、それなりのメリットはあるだろう。RPMとの比較になるが、やはりデジタル入出力があるのは強い。他のデジタルオーディオ機器(普通はプロ用だが)や、オーディオインターフェースとADATで8チャネルのデータを受け渡せることは、無限の応用性をもたらす。さらにコアキシャルのS/PIDFを使うことで、2チャンネルデータの受け渡しだけでなく、クロック同期にも使えるため、ADATの補助的な使い方ができる。
今までデジタルオーディオ機器の組み合わせやクロック同期なんてあまり考えることがなかったのだが、組み合わせても音質的な影響が出ないのがデジタル機器の有利な点。色々な機器の仕様を見て組み合わせを考えたら夢もふくらむ。色々勉強も必要だろうが、そんな機会を作ってくれたいい機器だと思う。
PCの通常使うデバイスから出力してしまう間抜けなアプリケーション用に用意していたEDIROL UA-3FXだが、いい加減音質の悪さに嫌気がさしてきた。ノイズの少ない点でUSBの機器を選んだのだが、音に魅力がない上にかさばるのではもう我慢も限界だ。何より筐体の貧弱さまでが可愛くない。
だったら、もっと品質のいいUSBのオーディオデバイスを買うのかというと、それもお金が勿体ない。内蔵のPCIカードでも安くてもっと品質の高いものがあるだろう。そんなこんなで選んできたのがONKYO SE-90PCIだ。中古CD探しのついでに日本橋のTWO TOPでちょっと高かったけど\9,280(税込)。
持ち帰ったらさっそく取り付け。ハーフサイズのカードで、ブラケットもハーフサイズのものが付いているから、これを標準タイプに付け替える手間はあるが、あとはいたって標準的な作業。配線はオーディオで標準のRCAだから何の苦労もない。これを従来UA-3FXに接続していたRME MultifaceII(以下Multiface)のアナログ入力5と6に接続する。必要なときにミキサー設定でアンプに送り込む算段だ。 ドライバはマニュアル通りにCDからインストールしないとコントロール用のアプリケーションが入らない点にさえ注意すれば何の問題もない。
光デジタル出力を使わない限り、単純にステレオで出力できるだけのカードだから、はっきり言って何にもできない。ASIOも使えないから、本格的なソフトでの再生にも問題がある。普通の再生ソフトで、Windows標準のミキサーでボリュームコントロールできるだけ。
それでもこのカードはすばらしい。ちゃんと音が出る。今も聴き慣れた柴田淳やFayrayで確認しているが、音質的には10万円のMultifaceに全く見劣りしない魅力的な音だ。もっともチャネル数が2つしかないし、入力も不能でミキシングすらできないから、単純に価格比較してはいけないのだけれど、それでもこの価格でまともなオーディオインターフェイス顔負けの音が出るのは画期的なことだ。
検証のために今回もRigthmark Audio Analyzerで調べてみた。PC内蔵というハンディのせいで、ノイズはそれなりに紛れ込んでいるがそれでも-100dBAは確保している。歪みはMultfaceよりも小さく(0.001%のオーダーだから、聴いてもわからないレベル)、周波数特性も10KHzより上で0.1dBのレベルで落ちているだけで、誤差の範囲だ。
コントロールパネルの画面。VIAのものをそのまま使っている。サンプリングレートを自動にすると、意味もなく48KHzになることに注意。キャプチャはiTunesを使っているときのもの。 |
Windowsの標準的なサウンドデバイスになるので、使い方を誤ると44.1KHzのCD音源を48KHzにリサンプリングされてしまったりする場合がある。そんな時は歪みも増え、なんか変な音になるので、まともなオーディオセットを使っていれば気づくだろう。それでも「なんか変だな」と気づいてから調べるのでは気分が悪い。コントロールパネル(写真右)でチェックできるので、音楽を聴くときはチェックするのをお勧めする。まあ、チェックできる分普通のサウンドデバイスよりはまともだとも言えるだろう。
とにかく再生音質の魅力に尽きる。まともなCDプレイヤー並の音だから、数万円のオーディオセットですら見劣りするだろう。筆者のスピーカーJBL 4318ですらこのレベルの音質を生かし切れていないのではと思えるほどだ。
致命的なのは入力がないことで、TVキャプチャカードがアナログ出力だとかなり困るだろうから、上位機種のSE-150PCIが必要なるだろう。ASIOのドライバが使えないとか、入出力のチャネルが少ないとか、本格的なオーディオ再生環境を構築するには苦しいが、とりあえずいい音で聴きたいだけなら、本機で充分。色々機能が欲しくなったら、本機をサブカードに回せばいい。単純なカードなので使い回しには苦労しないだろう。ただ、リサンプリングがかかると元が良好なだけに音質的な劣化が激しいので、その点だけは要注意。
昨年秋にASUS RADEON9600XTに裏切られて、書斎のマシン(aspasia)にはファンレス化したCANOPUS SPECTRA F11を使ってきたのだが、やっぱり遅い。別にゲームをするわけではなくても、Dreamweaverなどで画面更新する様子が目に見えるとかなりいらいらする。元々遅いソフトだから、ある程度大目に見ていたのだが、やはりこのディスプレイカードではWindowXP自体が重荷であるようだ。
別にゲームする気も失せているし、ファンレスで静かなもので、信用できそうなメーカー品を探してきたのがELSA GLADIAC544。新しいディスプレイカードがPCI Expressへ移行していく中で、今さらAGPのカードにお金をかけることもないだろうとの判断もある。これもSE-90PCIと同じく中古CD探しのついでの購入。日本橋のTWO TOPにて\8,980(税込)。
シャットダウン状態でおもむろにカードを変えて、VGAで立ち上がってきたらドライバをインストール。マニュアル通りCDからインストーラーを立ち上げたら、ディスプレイドライバのウィザードを閉じるまで待っていたりするかわいいところもあったが、インストールは一発で終わって、即色深度や解像度が変えれる状態になる。このへんはWindowsXPのいいところなのだろう。ディスプレイが1997年に購入したFlexScanE66T(20インチトリニトロン管)という骨董品に近いものなのだが、UXGA(1600×1200pixcel)でもフォーカスが甘くならず、ゴーストもなくて優秀な描画だ。
肝心の速度はどうかというと、ゲームをしていないから3Dの速度は何とも言えないけれど、普通に使う分には気にならなくなった。まあ、想定通りで目標達成。
買ってから気づいたのだが、このカードにはD1出力のためのケーブルが付いてくる(右図)。いったんコンポーネントのRCAコネクタで取り出してからD1に変換するという、あまりスマートなものではないのだけれど、AV利用を想定した仕様で、ファンレスの静粛性と相まって便利に使えるだろう。ただ、このD端子、MiniDINから直接出して、コンポーネント用と使い分けてもらう方がスマートで安いのではと思うのだが・・・
前々から機会があれば手に入れたいと思っていたIBM Enhanced Keyboard Model-Mの小型廉価版のModel M2(P/N1395300)である。Model-Mと同じくBuckling-springを使用していて、シンプルな英語101キーボードなのだが、形状はかなり小型化されていて、びっくりするほど軽い。筆者が入手したのは、1994年Lexmark製の新品。
肝心のキータッチの方だが、軽量化のためかプラスティックの品質がかなり落ちており、クリック音が上品さに欠けると感じる。軽いことからもわかるとおり、剛性が落ちているのもタッチの品質の劣化につながっているように思う。それでもBuckling-springのメリットである「クリック感を保ちながら引っかからない」感触は維持されていて、音さえ気にしなければ小型化と相まって実用性は高いだろう。もちろん大きな音がするから、静粛さを要求される場所での使用は難しい。薄いので、スタンドの使用が必須になることと、それでもキー配置が日本製のキーボードのように平板なので、打ちやすさという点ではModel-Mに一歩譲る。