島根県、隠岐諸島沖でのタンカー沈没では、1月4日現在、すでに3700トン(約 23000バレル)の重油が流出しました。(その後、5000キロリットル、と訂正される)
 1989年のアラスカ沖でのExxon Valdez号の座礁事故では、260000バレルが流出し、 10〜30万羽の鳥が死んだとされていますが、今回の事故も、海鳥にとってかなり深刻 な事態となりそうです。
 日本ウミスズメ類研究会(事務局・東邦大学理学部)、およびPacific Seabird Group日本海鳥保護委員会では、まず被害の実態を把握することを目的に、1月6日付で調査委員会を設置しました。(現在は新組織に移行。後述)

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1月5日
上空から見る限りでは4日はおよそ幅1キロメートル長さ10キロ程の油の帯が確認できましたが、5日ははっきりした帯といえるものはなく、かなり拡散している様子でした。しかし、ところどころ直径50メートル〜100メートルの重油の塊があり、これは相当な量の重油が層になっていました。
(上空で取材した報道機関の方からのメール)
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1月5日
Oil Spill Public Information Center
油が漏れるとどうなるか、アラスカで起きたExxon Valdez号の事故に関するさまざまな資料を提供するセンターです。
現在、センターより資料を請求中です。詳しい情報が入手できしだい、この場でお知らせします。
アメリカのHarry Carter氏から、今回の事故に対するメールが届けられました。
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1月6日
つぎの文書を研究会の全会員に向けて送付しました。

緊急!!


島根・隠岐諸島沖でのタンカー沈没、重油流出事故について



 すでに新聞報道等でご存じの方も多いと思いますが、1月3日、島根・隠岐諸島北東沖約100kmのところでロシア船籍のタンカー”ナホトカ号”が遭難、沈没し、約3700トン(23000バレル)の重油が流出しました。史上最悪と言われたアラスカ沖での”Exxon Valdez”号座礁事故では、260000バレルの原油が流出し、10〜30万羽の鳥が死んでいます。今回の事故による海鳥への多大な影響が心配されます。
 日本ウミスズメ類研究会では、Pacific Seabird Group日本海鳥保護委員会と共同で、油汚染海鳥被害委員会(Information Committee for Oiled Birds)を1月6日に設置しました。
 この委員会のおもな目的は、
1.被害の実状を記録し、
2.被害の規模を推定し、
3.被害から海鳥を守るための方策を検討する
ことにあります。

 組織の構成はつぎのとおりです。(1月13日のOBIC新組織結成に伴い、これまでお知らせしたものとは異なります。詳しくはこちらまでどうぞ。)

日本ウミスズメ類研究会、PSG日本海鳥保護委員会(JSCC)に対するお問い合わせは、
小野宏治
Tel.&Fax. 03-3685-6463、携帯080-806-8801(留守電ですが、メッセージは24時間後に自動消去されますので、ご注意下さい。)
  E-Mail: kojiono@gol.comHCB00437@niftyserve.or.jp
John Fries
Tel.03-3439-4110、 E-Mail: jnfries@bio.sci.toho-u.ac.jp

 アメリカでは、国が原告となって被害状況を取りまとめ、石油会社を訴える(漂着した油の成分から、どのタンカーから漏れたものかもわかる)そうですが、日本では被害の実態さえ、あまり伝わってきません。どこまでできるかわかりませんが、海鳥たちの死を無駄にしないためにも、まずやれることからはじめたいと思います。

 そこで、日本海側の会員のみなさんは、できる限り、近郊の海岸を監視いただくよう、お願いします。油にまみれた鳥は、何日かにわたって漂着します。したがって、時間に余裕のある方は、なるべく頻繁に観察を続けて下さい。もし油の付着した海鳥を観察したり、漂着死体を拾ったりした場合は、つぎのことを記録して下さい。
1.観察日時、観察者、観察人数
2.羽衣
3.油の付着状態(体のどの部分に付着していたか、どの程度付着していたか)
4.付近で見られた鳥、被害にあった鳥の種類と羽数
(死んだ鳥だけでなく、油が部分的に付着している鳥も。全体のうち、何羽に油が付着していたか、などを知るため)
5.観察した範囲(あとで被害規模を推定するため)
6.可能な限り、写真やビデオなどの記録
発見しだい、お手数ですが随時お知らせ下さい。

 海岸で実際に漂着した鳥を調べるためには、理想的には次の方法がとられます。
現在、日本では死体のすべてをOBICが回収していますのでご協力下さい。

1.もし可能なら毎日調査する。
2.死体にそれぞれ番号の付いたタグをつけ、誰も持ち去ることがないようにし、そのまま放置する。(死んだ鳥を重複して数えないように)(※注意※→この方法はアメリカでのものです。繰り返しになりますが、日本では死体のすべてが回収され、冷凍保存されています。)
3.もし生きている鳥がそこから取り除かれた場合、鳥の種類、数、日時等を記録する。 4.最低1ヶ月はカウントする。
5.死体には素手で触れないようにし、また油の揮発成分を吸わないようにする(人体に有害なため)。
6.もし識別不可能で、自宅で当面の間冷凍保存が可能な場合は、袋(いったん紙袋に入れて、それからジップロックのような密閉性の高いもの)に入れて持ち去り、数、日時等を記録する。
(PSGのHarry Carter氏による情報に基づいて作成)

 油にまみれた鳥を救うための科学的な方法は、まだ確立されていません。また、油を落としても死んでしまうことが少なくありません。しかし、Pacific Seabird Groupの協力を得て、再生(rehabilitation)のための資料を送ってもらっていますので、必要な方には情報を随時提供します。
 距離的な問題や、時間の制約(小野、Friesとも、他の仕事を抱えて動きが取れない状態)もあって、どこまで動けるかわかりませんが、委員会ができることがあれば、各方面への呼びかけ、連絡等、できる限りやっていきます。委員会のメンバーとして活動できる方は、小野までお知らせ下さい。(メールの場合は、HCB00437@niftyserve.or.jpとkojiono@gol.comにクロスポストして下さい)

 委員会の活動は、すでに動いている他の方々の活動を制約するものではありません。独自に動かれている方、また、そうした方をご存じでしたら、委員会までお知らせ下さい。情報の相互交換など、海鳥の保護にとって最良な方法で動くことが肝要です。

 なお、死体を発見された場合は、死体そのものを冷凍保存していただくと一番ありがたいのですが、残念ながらこちらではなんの保存設備もありません。もし家庭で保存可能な方は、ウミスズメ類を中心に保存をお願いします。こちらの受け入れ体制ができしだい、引き取ります。ただし、識別に困った際などは、この限りではありません。

 会員のみなさん一人一人の力が、海鳥の保護につながります。よろしくご協力下さい。
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1月7日
(財)世界自然保護基金日本委員会、(財)日本鳥類保護連盟、日本鳥学会に、それぞれ情報の相互交換を呼びかける文書をFAXしました。((財)日本自然保護協会、(財)日本野鳥の会には、すでに連絡済み)
タンカーの船首部分がすでに打ち上げられ、また、重油が沿岸に達した地域が出始めました。
アメリカのHarry Carter氏からは、今回の事故に対する2通目のメールが届けられました。
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1月8日〜
OBICは、13日に新組織に移行されました。これまでのOBICは、新組織の中で活動していきます。OBICのこれまでの活動は、上記の他、こちらをご参考下さい。新組織については、こちらをご覧下さい。



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Compiled by Koji Ono kojiono@gol.com
Revised: 20 Feb. 1997
URL: http://www2.gol.com/users/kojiono/