パーソナルコンピュータと呼ばれるものを私が初めて買ったのは1986年、当時本体だけで30万円以上のNEC PC-9801Mを親から借金して買った想い出がある。CPUは8086の8MHz、メモリーは256KByte、CRTは640×400pixcel8色、ハードディスクはなく、5inchのFDD(1.2MByte)が2台という、今から考えたら恐ろしいくらい低スペックな装置であった。以来、PCは進歩を続け、CPUは100倍速くなり、メモリー容量は1,000倍になり、HDDの記憶容量はFDD数万枚分だ。物理的な制約もあるCRTですら、面積比で7.5倍、色深度も入れたら60倍の情報量がある。それだけパーソナルコンピュータの能力が上がっているのに、キーボードだけはかえって悪くなっているように思うのは私だけだろうか?
10年ほど前までは、パーソナルコンピュータとはいえ、高級品であった。ケースもしっかりしており、メーカー謹製のしっかりしたキーボードが付属してきたり、オプションを数万円で買ったりしたものである。しかし、今のメーカー製のパーソナルコンピュータに付属するキーボードの質の悪さには閉口してしまう。コストダウンのために品質が犠牲にされているのは明白で、軽く不安定で、かろうじて入力できる程度のものでしかない。その割には初心者にしか役立たないような意味のないファンクションキーばかりが増えている。
コンピュータで仕事が進む今の社会に、重要な入力デバイスであるキーボードがこんなことでいいのだろうか、何も知らずに劣悪なキーボードを使って仕事をしている人がどれだけいるのだろうと思うと、恐ろしくなってくる。そんな訳で、キーボードについて情報を集め、私なりにの意見も加えて整理してみた。キーボード選びに役立てていただければと考える次第である。
キーボードはカタログに現れる情報以外に、チェックすべきポイントが多数ある。その中でも、快適に入力するために重要なポイントについて整理してみる。
たいていの人は日本語キーボードが普通だとは思うが、英語キーボードでもローマ字入力なら日本語が入力できるし、人によってはその方が使いやすかったりする。大きさも千差万別で、小さくするためにキーを詰め込んであったり、キーの数を減らしていたり、逆に初心者向けに、メールやWebなどの特殊キーがあるものもあったりする。まずキーの数で分類したのが下の表。
分類 | 説明 | 英語 | 日本語 |
---|---|---|---|
標準 |
アルファベット部分の右に、カーソルキーやテンキーがついたもの。 | 101key |
106key |
Windows標準 |
標準キーボードにWindowsキーが増えたもの。 | 104key |
109key |
コンパクト |
サイズを小さくするため、テンキー部分を省略したもの。 | 84keyなど |
89-92key |
マルチメディア |
Windows標準にブラウズやメールなどのキーを付加したもの。 | 109keyなど |
112keyなど |
その他 |
コンパクトよりもさらに小さくしたものや、特殊な形状のものがある。 |
さらに、標準的な配置と比べて、キーを詰め込んでいたり、配置方法を色々工夫してあるものもある。どんなキーボードが向いているかは、人それぞれ環境や能力や経験が違うから単純に決められるものではない。いくつか選択のためのポイントを書いておくので、参考になれば幸いである。
「使用頻度に合わせて」あまり使用しないキーボード(たとえばサーバ用)に大きなキーボードを使用するのも邪魔なだけだが、使用頻度の高い装置には、できるだけスペースを確保して標準サイズの使いやすいものを設置することを勧める。
「使わないキーは邪魔」たとえば私はWindowsキーは使わない。使う習慣がないし、なくても困らない。だからWindowsキーがあると他のキーが小さくなったりするのでない方がうれしい。同じように、たとえば10キーを普段使わない人(私は使うが)の場合、10キーはない方がスペースを有効に使えていいかもしれない。
「キーの数より品質」 前項とも関連するが、キーが多いのがいいとは限らない。たとえ初心者でも、後々上達した後のことを考えたら、最初からある程度品質に気を遣っておく方がよいと思うし、その方が上達も早いのではないだろうか。そういう意味でいくと、設置スペースの問題がない限り、サイズは気にする必要がないし、キー数なんて英語か日本語化を決めてしまえば、後は「打鍵しやすければどうでもいい」というのが私の考えである。
「無難なキーに慣れた方が得」これは人にもよるが、長い人生色々なPCを使う機会があると思う。特に仕事となると、常に自分の好みのキーボードを使えるとは限らない。そんな時、特殊なキーボードしか使えなかったら、やはりつらいと思う。自分の個性を主張することも大事だが、やはりある程度環境に合わせられる柔軟性は持ちたいもの。
オークションなどでよく「メカニカル」などと表記されていたりするが、まあそんな類のもの。しかしながら、表記がでたらめな場合が多いので注意が必要。
スイッチの種類 | スイッチの特徴 | スプリング | |
金属ばね | ラバードーム | ||
メカニカルスイッチ | 独立したスイッチが基盤に取り付けられている。コストはかかるが、耐久性が高いものが多い。 | 底が堅めで、打鍵音がある場合が多い。 | 金属バネと組み合わせてある。打鍵音は小さいものが多い。底は柔らかいが、しっかりしている。 |
メンブレンスイッチ | フィルム上にスイッチがまとめて印刷されている。耐久性はメカニカルに比べて劣る。 | メカニカルに似た感触。 打鍵音がある場合が多い。 | 最近最も多いタイプ。低コスト化しやすい。打鍵音はなく静かで、底が柔らかく、不安定なものも多い。 |
まず注意が必要なのは、スイッチの種類と打鍵音の有無は直接関係するものではない点である。打鍵音(クリック音)がするのを「メカニカル」と言っている人もいるようだが、正確にはスイッチ一つ一つが独立したものをメカニカルと言う。メンブレンでも金属バネを使っていれば、音が出るタイプもある(このタイプは「メカニカルタッチ」と表現されたりする)から、打鍵音だけでスイッチの種類を判断してはいけない。
スイッチの種類については、耐久性のあるメカニカルタイプというのを売りにしているキーボードもあるくらいなので、メカニカルの方がいいと思ってしまう人も多いかもしれないが、メカニカルに絶対的な価値があるかというと、私個人はそうは思わない。メンブレンの本質的な問題があるとすれば、フィルムを重ねてスイッチにしている関係上、水分に弱い(少し染み込んだだけでも全面清掃が必要である)点であるが、よく言われるスイッチの耐久性(打鍵回数)は、接点のメッキ厚や、スプリングの疲労との関係もあるので、単純に接点の強度だけで議論できる問題ではない。もちろん、かつてのキーボードにコストをかけていた時代の製品にメカニカルスイッチを採用しているタイプが多いから、「メカニカル=高級品」という意味でとらえる場合もある。それでも前述したように、キーボードの品質は総合的なものなので、単にスイッチがメカニカルであればいいと考えるのは、誤りだと言えるのではないか。
また、打鍵音も、スイッチ自体が音を出す(キーがカチャカチャいう)場合と、あえてクリック時に音がでるようにしてある場合(キーがパチパチいう)がある。 打鍵音の有無やその性質については好みがあって、どんなものが良いとか悪いとかは一概に言えないし、メリット・デメリットを認識した上で、自分にあったものを選ぶことになる。一般的な話をするなら、打鍵音のしない方がもちろん静かなので、静粛性を求められる場所では、打鍵音がないか、あっても小さい方が望ましい。しかしながら、人によっては打鍵音がある方が、タイプが正確になったり速度が上がったりするし、いくら静かでも他の要素に問題があれば使いにくいから、総合的に判断すべきであろう。
キーを押してから、スイッチが入るまでの押し下げ量と、底に当たるまでの押し下げ量の両方が使い勝手に影響してくる。一般的に、スイッチが入るまでが2.0〜2.5mm、底に当たるまでが3.0〜4.0mm程度が一般的なものであろう。両者とも、大きすぎず小さすぎずの程々な量があるので、厚みの制約が少ないデスクトップタイプの場合は、よほど設計がひどいものを除いてあまり問題になることはないはずである。
※参考までに私の所有している日本のDOS/Vのリファレンス機IBM 5576-A01を実測してみたところ、比較的長めでスイッチが入るまで約2.5mm、底に当たるまで4mm弱であった。IBMのBuckling-spring採用のタイプはこの程度が多いようだ。
ノート型のキーボードや薄型のタイプなどでは厚みを薄くするために、キーストロークが確保できない場合が多いので、本格的な入力には不向き。また、最近は比較的キーストロークが短めのものが多いようなので、それに慣れている人は長すぎるとかえって打ちにくいこともある。結局のところ、ストロークの長短の向き不向きは案外長時間使用してみないとわからないから、面倒がらずに色々なキーで試してみることをおすすめする。
キーの重さとは、キーを押したときの反発力だが、正確に言うと何グラムくらいの重さでスイッチが入るかで測定したりする。30gくらいの軽めのものから、70gを越えるような重めのものまである。また、押している間の重さも一定ではなく、スイッチが入ったところで軽くなる(クリック感がある)ことで、キーが押されたことを感覚的に知らせる仕組みになっている場合も多い。
重さに関しては、人それぞれで全くの好みの問題と言ってよい。クリック感については、これがないとどこでスイッチが入ったか感覚的にわかりづらいので、一般的には打鍵しにくいとされているのだが、絶対的なものではない。プロの入力者の中にもクリック感がない方が使いやすい人もいて、あえてクリック感がない(リニアストローク)設計のキーボードもあったりする。最近では、製造コストを下げるためなのかクリック感を省略してあるものも多く、クリック感について意識していない人も多くなって来ているようである。
キーボードを使用する以上、何らかの形で打鍵の完了を知る必要がある。初心者の場合は、その都度画面で確認する場合も多いだろうが、それでは高速に打鍵する場合に追随するのが困難である。そこで、指の感覚や音を利用することになる。後者は前述した打鍵音で、前者がこの項で述べているクリック感や底まで押し込んだ感覚である。
キーを軽く打つ人は、この底まで押し込んだ感覚や音で打鍵を認識している場合が多く、底まで押し込んだところで指への負担があまりないので、クリック感はかえって邪魔なものになる。
キーを 強く打つ人の場合、キーを底まで強く押し込んでしまうと、指を痛めることにもなりかねない。クリックしたら押す力を弱めるような入力方法をとることで、指の負担を軽減することができるため、クリック感が欲しい人が多いようだ。
前述の打鍵方法の違いによって、クリック感についての好みは大きく分かれてくることになる。それでも、どんな打鍵方法が向いているのかあまり意識しないままに、今まで通りの使い方をしている人も多いように思う。いろいろなキーボードを使ってみて、今一度自分に向いた打鍵方法を再確認してみることは、最も作業性のよいキーボードを選ぶ上でもとても重要なことなのではないだろうか。
スイッチを押し込んでキーが止まる(底に当たる)ときに、堅いものと柔らかいものがある。一般的には、ばねを利用したものに堅いものが多く、ラバーカップタイプの場合柔らかいものが多い。さらに柔らかいタイプでも、押し込んだ状態でキーがあまり動かないもの(メカニカルタイプでラバーカップを使用したものなど、比較的高級品に多い)と、フラフラ動くものがある。
これは好き嫌いの要素も多いが、前項で述べたキーの重さやクリック感、使う人の打鍵方法(押さえる力や押さえ方)も影響する。底まで押さえたことを感覚的に確認したい人は、柔らかいとよくわからないし、逆に強い力で底まで打鍵する習慣のある人は、堅いと指を痛めてしまう。そんな中でも、押し込んだ状態でキーがフラフラするのは一般的にあまり好まれていないようである。
入力する速度が上がると、キーボードが動いたり、ふらふらしたり、たわんだり、色々障害がでてくる。安定して高速に入力するためには、キーボード自体がそれなりの重さと強度を持っていることも必要である。デスクトップで使用する場合、重いことによる弊害はあまりないので、重くてがっちりしたものを勧めたい。打鍵して少しでも動くようなものは絶対にだめ。また、チルトスタンドを使う人は、立ててみてチェックすること。
特性を並べたところで、実際にどんなキーボードが優れているのか、どんなキーボードを手に入れようか、判断に苦しむかもしれない。具体例として、筆者が実際に使用したキーボードのうち、最近のものを中心に印象的なものを紹介してみる。少しでも紹介できるキーボードが多い方がいいとの判断で、 このレビューのなかでは例外的に、職場で使用したものも含まれている。ただ、品質の悪いキーボードはその辺にたくさん転がっているが、あえて評価する意味もないと思うので紹介していない点注意されたい。特記しない限り【】内は2005年9月現在の状態。
※注意:個人的にIBMのキータッチが好きなので、同社の製品が多くなっているが、製品のユーザーである以外に同社と筆者は一切関係ないことを断っておく。
職場の汎用機端末として配置されているもの。大きなサイズで、特殊なキーが多数ある。メカニカルでクリック音のあるタイプ。あまり長時間使用したことはないが、感覚的に日本語キーボードとしてはトップクラスの品質だと思う。入手性も良好で、リースアップの中古品が多数で回っているし、オークションなどでも比較的安価に入手することができる。これでキーの配置が普通であれば何の問題もないのだが、何せ古い規格のものなので使わないキーが多く、キーボードのドライバや設定には注意が必要で、Windows2000やMeでは利用できない可能性が高い。【職場にて希に使用】
個人的にも下記IBM EnhancedKeyboard(1391401)を購入する際におまけとしていただいたのだが、Windows2000ではレジストリを修正してみてもうまく認識しないようで、使用できていない。Windows95では使用できているので、キーボードの問題ではなく、Windows2000に入っているプログラムの仕様上の問題なのであろう。【自宅にて遊休】
職場の5576-001のキータッチを自宅でも再現したくてYahoo!のオークションで入手したもの。軽快なクリック感のあるメカニカルキーを採用している。スプリングには板バネが使われていて、これが明確なクリック感を残しながらも、軽快かつ柔らかい独特のキータッチを実現している。問題は5576-001と同じようにキーボードのドライバで、Windows2000やMeでは標準でサポートされていないため、レジストリを修正するなどの対応が必要になる。キーボードを気分によって取り替えたい私にとって、そのたびにレジストリを修正するというのは危険すぎるため、このキーボードに対応したkeyboard.infを作ることで対応した。また、5576-001と違って入手性にも問題があり、オークションでもまず1万円以上になることが多い。さらにキーのスプリングが板バネなので、Buckling-springの5576-A01などと比べて耐久性にも問題がある。スイッチを分解することができるので、へたったキーを使用頻度の低いキーと交換することができるのが唯一の救い。元妻のメール用として所有権移転。【贈与済】
自宅用に1997年に購入したもの。かってDOS/Vパソコンと言われていた頃の標準と言えるキーボードである。標準的な大きさの、シンプルな106keyにBuckling-springという構造の重めのクリック音のするメンブレンスイッチを備えている。打鍵音が大きいので、静粛性を好む向きには不適であるが、安定したキーストロークに、リズミカルな打鍵音で、長時間の入力にも安心して使用することができる。キーボード自体に重量がかなりあり、安定している点もよい。問題は入手性で、中古屋などではまず見かけないし、オークションでもまず1万円以上になることが多く、手に入れるのにはかなり苦労する。また、メンブレンによくあることではあるが、水分を染み込ませてしまうと、キーを全て取り外しての、全面清掃が必要となる点、注意が必要である。この全面清掃で、スプリングを痛め、しばらく遊休機となっていたが、5576-003の部品を入手して補修し復活。しかし数ヶ月の後再発し引退。【自宅にて遊休】
もう一台GreenPCの付属品としてオークションで入手した。上記キーボードの代替として両親のメール用に供していたが、マシンを更新したら認識できなくなったので引退。【自宅にて遊休】
これも職場の汎用機端末として配置されているもの。メンブレンのラバードームでそれなりのクリック感はあるが、クリック音はない。作り自体はIBMらしくしっかりしているので、打鍵音を好まない向きにはよい選択肢となるであろう。入手が容易である点も評価できる。個人的には、打鍵音がないとリズムがとりにくいので、あまり好きなタイプではない。【職場にて時々使用】
5576-A01でIBMのキーボードに惚れ込んで1998年に自宅用として買ったものだが、裏切られてしまった。シンプルなWindows用の109Keyで、作り自体はしっかりしている。ラバードームのメンブレンスイッチに若干のクリック感あり、キー自体がかなり軽い。底が柔らかくて、しかもふにゃふにゃするのが個人的に気に入らない。遊ばせておくのももったいないので、低価格PCについてきた超安物キーボードを使用していた両親に安く分けてあげたが、結局のところ5576-A01で代替したため定職を失った。【売却済】
2001年10月オークションで安く出回っていたので、つい買ってしまったもの。DELLなどと同系統のメカニカルキーを使用しており、打鍵音・クリック音共にあるタイプ。キーが平面ではあるが鉄板に固定されており、プリント基板にも半田付けされているなど、キー部分の強度は申し分ない。スイッチの質も高く、押し下げ圧のムラも少なく、打鍵感は下記、DELL AT-103に似ていて相当高いレベルである。問題は筐体で、プラスティックの質が悪いうえ、スタンドもフラフラだ。ケーブルの質も相当悪い。面白いのは、ケーブルがATコネクタタイプで、PS/2の変換コネクタが付属している点。オークションでも時々見かけられ、高値になることもあまりないから、入手自体は比較的容易であろう。現在も販売されているFILCOのFKB-109J.BIGと同等品であるとの情報もあるが、確認はとれていない。【売却済】
職場でかつてサーバーになっていたCompaqDeskProが廃棄されるときに救出したもの。メンブレンスイッチでクリック音はないが、クリック感はそれなりにある。ストロークも長く、底が柔らかいのにキーも安定しているので、長時間の使用でもあまり疲労感がないあたりはすばらしい。打鍵音を好まない向きには、相当高く評価できるのではないだろうか。【職場にて予備保管】
2001年春、職場で意味もなく転がっていたものを拾い上げてきたもの。メカニカルの打鍵音があるタイプでありながらクリック音もなく、タッチが軽い。同じメカニカルのIBM 5576-001やメンブレンタイプのIBM 5576-A01と比べてかなり軽快な印象だ。あまり使い込んでいないのではっきりとしたことは言えないが、今のところの感触ではちょっと軽すぎてスピードがあがったときの底にあたるショックが大きいような気がする。【職場にて予備保管】
家庭用としても、2001年7月日本橋の中古やさんに「ジャンク」として売られていたものを、\1,280で買ってきた。入手経路は全く違うが、タッチの軽さは同じで、下に述べるAT103と比べてストロークが若干不安定(圧がぶれる)ではあるが、それでもキーボードとしての使い勝手には大きく影響しない。キーが軽いので高速打鍵に向いており、爪を伸ばしたりしていなければ、指に無理な力がかかることもない。入手の容易さ、適当な大きさなど、総合的に見て高く評価したいと思う。あえて難を言うなら、プラスティックの品質が焼けやすい(黄色く変色する)ことと、若干打鍵音が大きめなので、静粛さが求められる環境には不適である点である。打鍵音はカチャカチャいう感じで、好みは分かれるところ。長時間安定して入力したい向きには、もう少しストロークが安定したものの方がいいように思う。一時妻がメール用として使用していたが、5576-002にて代替したため遊んでしまっている。【自宅にて遊休】
2001年6月、Yahooのオークションで落札したDELL OptiPlex466/Leに付属(実はこのキーボードが第一目的)していたもの。上記SK-D100Mと同様に、メカニカルの打鍵音があるタイプで、サイズが一回り大きい。キータッチの軽いところも似ているが、ストロークはやや安定していて、打鍵音・クリック感ともに若干小さめである。軽いキーが好きな人の長時間打鍵には、SK-D100Mよりはこちらの方が向いているだろう。打鍵音が、コロコロいう感じで、人によっては嫌うかもしれない。入手性はSK-D100Mに比べてあまりよくない。いいキーボードなので温存しておくつもりだったのだが、大きくて邪魔になるので結局売却してしまった。【売却済】
実家の両親にプレゼントしようと2005年9月に買ったもの。独Cherry社のMX tactile feelスイッチが使用されていて、この手のメカニカルにしては引っかかり感が少なく、適度なクリック感が心地よい。メカニカルにしては打鍵音が低めなのも特徴。キーの配置を崩さずに最小限の設置面積でまとめてあり、プラスティックの質も高く安定性も高い。日本語キーボードなのであるが、かな表記なしのタイプ。さらに、全角半角などのキーにも日本語を使わず独特の表記がなされている。何もそこまでして日本語を排除しなくてもいいのにとも思うが、これもひとつのポリシーなのだろう。普通に売っているから、入手性は抜群。ぜひ試してみてほしい。【実家で両親が使用】
2001年9月、職場で廃棄されるものをもらい受けてきたもの。上記DELL AT-103と同じく通称Bigfootと呼ばれるサイズの大きなキーボードで、シンプルな英語101キーを持っている。グラフィックワークステーション用であるため大理石色の美しいボディとコントラストを持ったキーの色が特徴的だ。キートップの文字もイタリック体が使われていたりして、ちょっとこだわりを感じさせるキーボードである。メカニカルスイッチを使用しており、適度なクリック感を残しているものの、打鍵音は最小限に抑えられていて、静粛性に優れたキーボードである。キータッチは軽く、非常に素直なもので、スイッチの品質の高さを示している。英語キーボードなので日本語の入力にはそれなりに工夫が必要である点や、入手性の点では難があるが、基本的な能力をおさえた上で、他のキーボードにはない美しさという魅力を持っている点で、よくできたキーボードであると思う。これで私の好みであるBuckling-springのキータッチを持っていれば言うことはないのであるが、贅沢な悩みかもしれない。いいキーボードには違いないのだが、手狭なので手放すことになってしまった。【売却済】
2001年7月、Yahooのオークションで新品を経費込み約\2,000で入手したもの。Windowsキーのついた英語の104キーボードである。メカニカルのスイッチに、ラバーカップを組み合わせて作られていて、非常に安定したストロークと適度なクリック感を実現している。メカニカルキーでありながら、静粛性に優れている点も非常に評価できる。また、キー毎に重さを変えてあり、このことがよりスムーズな打鍵を可能にしている。英語キーボードなので、日本語の入力にはそれなりの工夫は必要であるが、静かな打鍵を求める人には究極の選択のような気がする。個人的には、ちょっとキーが軽すぎるし、クリック音がほしいタイプなので、手放すことにした。【売却済】
軽いキーボードを使いたくなって2005年9月購入したもの。静電容量スイッチを使っていて、スプリングとラバーカップを併用したタイプ。ストロークの安定感は上記KeyTronic KB101-C以上。微妙なクリック感があるのみで、すっと文字が入っていく感じ。底突き感も堅すぎず柔らかすぎずで、とにかく早く打てるタイプ。キーのプラスティックの品質も高いため指とキーが当たったときの音も美しい。キーによって重さが変えてあって、30g,45g,55gの3種類があるらしい。軽いものも使いたかったのだが、入力ポイントが浅いことと相まってちょっと軽すぎる感もあり、普段重いキーになれている筆者には練習が必要。【自宅にてテスト中】
2005年3月、Yahoo!オークションで幸運にも買い手が付かず、開始価格の\7,000で入手した(してしまった)もの。通常は1万円を下ることはまずない。製品名通り素直な英語101キーなのだが、スイッチでCtrl-CapsLockなどの入れ替えができたり、Dovrak配列なども使用できるなど往年の高級品である。安定した筐体に高品質のメカニカルスイッチを用いており、メカニカルキー特有の引っかかり感や、若干キーが焼けやすかったりカチャカチャ音がするなどの問題はあるも、高品質で使える逸品である。英語キーボードであるから、日本語の入力にはそれなりの工夫が必要なこと、入手性があまり良くないことなど、それなりにハードルは高いが、英語のメカニカルキーに興味を持ったらぜひ試してもらいたい。【自宅にてテスト中】
結局のところ、IBMのキータッチを追求していくなら、最後はやはりこのシリーズなのだろう。もっとも一般的なのはP/N1391401なのだが、私が所有するIBM Enhanced Keyboardの中ではもっともノーマルで、このシリーズを代表するにふさわしいものだと考えたので、あえて代表にしてみた。その他のキーボードについては、別コラム「IBM Enhanced Keyboard Model-M」に詳しく述べたので興味のある方は参照されたい。
大きな形状の伝統的な英語101キーボードで、余分なキーのないシンプルなものである。5576-A01と同様にメンブレンスイッチにBuckling-springを使用して、クリック感も明確で、打鍵音も大きめのIBM独特のキータッチを実現している。ただしA01とはタッチが明らかに異なり、より弾力性に富んだ柔らかいタッチである。また、英語圏向けに、キーの高さがある形状をしており、平べったい形状の日本向けキーボードとは一線を画するものがある。英語キーボードであることから、日本語の入力には人によってはそれなりの工夫が必要になるが、型番や年式にこだわらなければ入手は比較的容易で、新品やそれに類するものも出回っているから、機会があれば試してみてほしい。
2001年11月、自宅で文字入力をメインにするときに、机上を広くしようと思って買ったもの。1987年製造のIBM製で、マークは小型の白黒タイプ。10キー部分が省略されていて、NumLockがShift+ScrollLockに割り当てられている。ノートPCのように、NumLockをONにすれば、10キーボードもどきの操作を行うことができるようになってはいるものの、決して使いやすいとは思えないし、未だかってそんな使い方をしたことはない。キータッチはEnhance Keyboardとは明らかに異なるもので、ストロークが短く、クリック位置がより深いところにあるので、より堅い印象を受ける。
設置スペースを小さくするために、キーを詰め込んだり、配置を工夫したりして、キーの数を確保してあるものが最近多いが、このキーボードのようによけいな小細工をせず、通常の配置で10キー部分のみすっぱり切ってしまうのも、一つの割り切りとして面白い。 ただ、日本IBMの5576-003のように、せめてLEDくらいは詰め込むところはなかったのかと、ちょっと残念ではある。 新しくて使いやすいものが来たので、予備機に回す。【自宅にて遊休】
もう1台2004年1月にオークションで入手。ブルーロゴの防水タイプで型番は1397681。【リビングPC用】
Model-Mの小型廉価版の位置づけとなるこのM2。Model-Mと同じBuckling-springを採用していて、キータッチもそれなりに近いものがあるのだが、やはりプラスティックの品質や剛性の問題で打鍵感はそれなりに劣るものになっている。また、キーサイズは同じであるものの、ボード自体のサイズも極限まで切りつめられているし、キートップは日本の製品に多い平板なものだ。ありきたりのスタイルで、スイッチの機構だけがModel-Mと同じというこのM2。英語101のBuckling-springでないと嫌という人でない限り、入手性も低いことから、あまり勧められたものではないだろう。【自宅にてテスト中】
★の数 | 評価 | 個人的好み |
---|---|---|
★ | 最悪 | 絶対いや |
★★ | 劣る | 使いたくない |
★★★ | 普通 | まずまず |
★★★★ | 良好 | なかなかよい |
★★★★★ | 優秀 | すばらしい |
個別に説明しても、それぞれの関係がわかりにくいので、表にまとめてみた。私の好き嫌いの部分をできるだけ除外して、キーボードの品質的な面を「評価」としている。ここでは、入手性やドライバの特殊性などは評価していない点注意されたい。また、筆者個人の好き嫌いを含めたものを「個人的好み」として評価している。☆は★の1/2を意味する。
キーボード | スイッチ | スプリング | 打鍵音 | クリック感 | キーの重さ | 安定性 | 評価 | 個人的好み |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
IBM 5576-001 | メカニカル | 板バネ | 大きめ | 強い | 普通 | 良い | ★★★★★ | ★★★★★ |
IBM 5576-002 | メカニカル | 板バネ | 大きめ | 強い | 普通 | 良い | ★★★★★ | ★★★★★ |
IBM 5576-A01 | メンブレン | ばね | 大きめ | 強い | 重め | 良い | ★★★★★ | ★★★★★ |
IBM 5576-B01 | メンブレン | ラバー | なし | あり | 普通 | 良い | ★★★★☆ | ★★★ |
IBM 5576-B05 | メンブレン | ラバー | なし | 少し | 軽い | 並 | ★★★ | ★★ |
SMK-8851 | メカニカル | バネ | あり | あり | 重め | 劣る | ★★★ | ★★★ |
Compaq Enhanced Keybord III | メンブレン | ラバー | なし | あり | 重め | 良い | ★★★★☆ | ★★★★ |
DELL SK-D100M | メカニカル | ばね | あり | あり | 軽め | 良い | ★★★★☆ | ★★★★ |
DELL AT103 | メカニカル | ばね | 小さめ | やや小 | 軽め | 良い | ★★★★★ | ★★★★☆ |
FILCO FKB108M/NB | メカニカル | ばね | 小さめ | やや小 | 普通 | 良い | ★★★★★ | ★★★★☆ |
SG AT101(9500900) | メカニカル | ばね | なし | やや小 | 軽め | 良い | ★★★★★ | ★★★★☆ |
KeyTronic KB101-C | メカニカル | ラバー | なし | やや小 | 軽い | 良い | ★★★★★ | ★★★★☆ |
Topre Realforce101 | 静電容量 | ラバー | なし | 僅か | 軽い | 良い | ★★★★★ | ★★★★☆ |
OmniKey 101 | メカニカル | ばね | 大きめ | 強い | 重め | 良い | ★★★★★ | ★★★★☆ |
IBM Enhanced Keybord | メンブレン | ばね | 大きめ | 強い | 重め | 良い | ★★★★★ | ★★★★★ |
IBM Space Saver | メンブレン | ばね | 大きめ | 強い | 重め | 良い | ★★★★★ | ★★★★☆ |
IBM Keyboard Model M2 | メンブレン | ばね | 大きめ | 強い | 重め | 並 | ★★★★☆ | ★★★★☆ |
※余談ですが:こうしてみてみると私の使っているキーボードってでかいものばかりですね。
コストダウンの波にのまれて、粗悪な品質のキーボードが氾濫している現在、市販で手に入れられる品質の高いキーボードはかなり限られている。私自身、市販品ではなかなか気に入ったものがないので、中古のオークションや職場の廃品などからキーボードを探しているような状態で、まるで骨董品屋の親父のようだ。オークションで取り引きしている人のなかには、(レアなメカニカルキーボードを使っているといった)ステータスがほしい人もいるように見受けられるが、私にしてみたら、珍しいもの・貴重なものを求めているわけではなく、日常使用する筆記用具に、\100のシャープペンシルではなく、書き心地の良い\1,000のシャープペンシルを求めているだけのこと(価格はそれぞれ10倍だが)なのに、なぜこんなに苦労しなければならないのだろう。
これもWindowsが普及して、Webのことをインターネットと呼ぶ世代(年齢に関係なく、最近になってPCを始めた人たちを指す)が、キーボードを使わなくなっているせいなのだろうか?確かに、インターネットの代名詞になっているWebブラウザ操作では、キーボードを使う機会はほとんどないと言っていいだろう。それでも、これからEコマースが普及し、世の中の取引の流れが変わってきたとしたら、いつまでもキーボードを使用せずにいられるだろうか?取引にはメールは欠かせないものだし、今まで手紙を書いていた相手にも、mailを出すようになったら、もっとみんなキーボードの大切さを理解するようになるのではないか。
一時は機能性だけが求められていたケースにも、最近は見栄えや品質が重視されるようになってきている。そのうちキーボードも見栄えや品質が求められるようになるに違いないし、一部のメーカーでは作りの良さを全面に出して売り出したりもしているので、案外安心していていいのかもしれない。ただ、今の段階は、単純に「メカニカル」「メカニカルタッチ」が幅を利かせていて、人によって異なる本当の打鍵感の良さにはあまり目が向いていないように思える。
みなさんはどんなキーボードが好きですか?今は私個人の好みで作ってしまっていますが、色々な人の色々な意見を聞いて、このページを充実させていきたいと思っています。ご意見がありましたら、matty@gol.comまで気軽にお寄せください。