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リビングシステム・セミナー   2003年7月

 

●デザイン

 バイオシェルターの屋根と水タンクが完成した。7月20・21日、9人の参加者がランドに集まり、「リビングシステム」という排水処理システムの作り方を学習した。「リビングシステム」とは、その名の通 り、水性の動植物や微生物が、水の中で日光や養分を得ながら小さなエコシステムを完成させてつくるシステムだ。人間の仕事は、このエコシステムのデザインと、栄養分を与えること。栄養分とは、生活排水や汚水、産業廃棄物でもよい。今回は私たちにとって、三つめのリビングシステムになる。一つはツリーハウスにあるもの(ウェブサイト http://www2.gol.com/users/esi/ 「Projects」参照)、もう一つは、1989年に、オーシャンアーク( http://www.oceanarks.org/ )の顧問であるジョン・トッド氏のアドバイスによって作られたドーム型バイオシェルターだ。

 こうしたデザイン作業は、エコロジカル・エンジニアリングと呼ばれる。エコロジカル・エンジニアと呼ばれる人間が、普通 ではバラバラにあるエコ・システムを結合させる。「自然」がこれに適応し、実際の仕事を行うのだ。人間はおいしいところを取るわけである。不公平? その通 り。私は、ジョン・トッド氏が初めて「リビングシステム」を使った汚水処理施設のオープニング・セレモニーに出席していたが、こうしたシステムに挑戦するという先進性かつ有望性について、多くの政治的な祝辞を聞いた後やっと、ジョンが話す番になった。感謝の辞を述べ、彼はごく簡潔に語った。「微生物たちに手を貸しましょう。彼らは営々と私たちの下の世話をし続けているのですから。」 その通 り! 皆が手を叩いた。

 トイレはバイオガス生成用に使うので、このキッチンでは、台所からの排水と洗濯排水だけを処理すればよい。食堂にあるバイオシェルター内で、排水は全て、まず、大きなゴミや食べ物のクズなどを取り除くフィルターを通 る。その後、床下にある300リットルタンク内で沈殿させる。そして、小さなポンプが、床下を走るパイプを通 して、リビングシステムの入り口まで水を送り出す。ここで、水量調節タンクに入る。このタンク内には、木炭と、水位 を測るセンサーがある。タンクの外には、排出量をコントロールするバルブ。この水量 調節タンクから出た水はまず、多孔性の砂利を敷いて、水生植物を植えた7.2メートル長のステンレス製「とい」を通 る。この段階の水は含む養分も濃く、といには日光もたっぷり当たるため、小石は藻だらけだ。このといから溢れた水は、「沼沢」区に流れ落ちる。この「沼沢」タンクは、コンクリート製のといの中に断熱材を入れ、防水ライナーでカバーしたものだ。プラスティックの板を数カ所に入れ、それぞれ異なる土を入れた五つの「沼沢」ゾーンに区切る。第一のゾーンには、近くの池畔から採取した草を植えた。第二のゾーンは、赤い粘土層を下にして稲や、その他、田んぼに見られる植物を入れて作った一畳サイズの「田んぼ」だ。第三は、これも地域の池に60cmほど浸かって生えていたヨシを植えた。この「沼沢」ゾーンでは、水深30cmほどに植わっている。第四は、天竜川沿いに生えていた別 種のヨシ。これは、砂っぽい土を好むようだ。どの植物もそれが生育していた土をつけて植えたので、微生物がたっぷり付いてきたはずだ。最後のゾーンは、ホテイアオイなど水に浮かぶタイプの植物を入れた。このゾーンの水はよく澄んでいるので、小さな酸素の泡が植物の根からわき上がってくるのが見える。

●試運転

 こうしたエコシステムをデザイン・制作中に、ジョン・トッド氏が与えたくれた助言は、とにかく多くの種を植えろ、ということだった。というのは、システムが全体として効率よく機能するよう順応すれば、枯れるものもあり、勢いを増すものもあるからだ。システムに何らのエネルギーを提供できない植物や微生物は、システムからも助けてもらえない。枯死するか、休眠状態で、自分たちに有利な環境に変わるまで待つか、どちらかだ。おそらく、地球のエコシステムの一員である私たち人間も、このことからも学ぶべきことがありそうだ。

 この冬のバイオシェルター内の気温を観測したら、来年は「沼沢」ゾーンにパパイヤなどの熱帯性植物を植えることができるかもしれない。このシステムに加える新しい植物を常に探しているので、もし、湿地性植物をご存じであれば、どこで手にはいるかお知らせいただきたい(ESI宛て esi@gol.com )。

 最初の数週間は、いくつかの植物は枯れるだろうと思い、背の高いヨシは枯れかかっているようだった。「大変だ、枯れかかってる。」実際、ヨシは移植の負担に耐えつつ、私たちがうっかり折ったり、傷つけてしまった2メートルの長身を支えることができなかった。しかし、数日後には、泥の中から新芽が伸び、全ての植物が順調に成育していた。ヨシが、その根に酸素を取り込む仕組みはすばらしい。根に付いた好気性バクテリアが養分を分解、窒素と化合させ、植物は、成長に必要な窒素と養分を得る。おそらく微生物は、地球のもっとも重要な生き物だろう。彼らが、物質を分解し、動植物がエネルギーを得、排泄物を片づけることができるのだ(私たちの消化器官に多種多様な微生物がいることを考えてみよう)。微生物は、大気中のガスをコントロールして、植物の生長を調整してもいる。

 現在は、システムが一日にどれだけの排水を処理できるかを試験中だ。目標は、10時間で最大200リットルの処理である。システムは、日射がある時間にはより活発に機能し、それが一日10時間として、一日200リットルの流水量 でも、毎分三分の一リットルにしかならない。これは、わずかずつしたたる程度だ。ESI のワークショップは週末だけなので、この流水量を週に渡り分散させる方が現実的だろう。どのようにして? 答え。注水バルブを調節する。

 時には、手動で水量を変え(「エコロジカルデザインのための12原則」その5)、一度に40リットルを流してシステムに洪水を起こす。食堂を使わないときなど、システムは数週間にわたって、一日ほんの数リットルずつの水で、蒸発による水量 の低下を克服しなければならないこともある。一滴ずつ、ぽたり、ぽたり。植物はたっぷりごちそうがやってくる日を待たなければならないのだ。

 最初の沈殿タンクでは、浴槽から洗濯機に水を汲み上げるときに使うような小さなポンプを使用している。これは、直流で動く。エネルギーをより効率よく使用するために、直流/直流の変換器を使って、代替エネルギーによる24ボルトのシステムから、直流ポンプが必要とする8ボルトまで、電圧を下げる。沈殿タンク内には水位 センサーを入れ、水が底についたらポンプを閉じ、ポンプが延々空回りを避ける。水量 調節タンクにはセンサーが二つある。タンクが満水になったら、ポンプを閉じるセンサーと、数時間後、タンクが空になり、木炭が外気にさらされたら、再び注水するようにポンプのスイッチを入れるセンサーだ。

 微生物の環境は整ったが、他の生物たちはどうだろうか。映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の台詞にもあるように、「その場所をつくったら、連中はやってくる」のである。そう、連中は来た。連中とは、トンボや蚊などの虫、それにカニやカエルたちだ。アマガエルだけではない。正真正銘田んぼに棲むカエルも来た。100メートル先から歩いて、跳んでやって来た。彼は今、泥中に座って、ボウフラを食べ、夜には交尾相手を求めて鳴いている。多分、じきに、Mrs.ケロケロがやって来て、この秋は夫婦でバイオシェルター内に冬眠するだろう。こんなふうに考えると、カエル愛好家としては、大いに愉快な気持ちになる。しかし、私の相棒は(カエル嫌いではないと言ってはいるが)、そうではないようだ。

 水が「沼沢」ゾーンを抜けてきれいになり、酸素も豊富に含んだ後は、再び、床下のパイプに入り、引力によって細長いカーブを描いたタンク内に入るが、ここが、食堂のテーブルの台座となっている。このテーブルのトップは、廃バスの窓ガラスをリサイクルした合わせガラス(安全ガラス)で作る予定だ。現在、こうしたガラスがないかと探している。メダカや植物が暮らすこの水の流れは、もう一つの300リットルタンクに続き、ここで、さまざまな洗い仕事に再利用されるのを待つ。

 最後に、この水はそもそもどこから来るのか。もちろん、空からだ。70平方メートル以上の屋根から雨水が集水される。屋根に1mmの降雨があれば、70リットルの水が得られることになる。ここには、2000リットルの貯水力があるが、並程度の風雨があれば、あっという間にこのタンクがいっぱいになる。雨水はネットや濾過装置を経て、葉やゴミを取り除く。最初のタンクは、沈殿タンクで、この下にあるタンクから水を引いている。フロート弁が下のタンクの水量 を調節し、水が使われる分だけ自動的に補水する。直流の電動ポンプで、四つの流しに行きわたる水圧を得る。

●エコロジカル・デザインのための12原則

  1. 地質的かつ鉱物を含む多様性が存在する
    三種の岩石−火成岩、堆積岩、変成岩−を砕いたもの。生物学的反応は、土を構成するミネラルによって大いに決定される。
  2. 養分の貯蔵は必須である
    大量の腐植土があることによって、自然の有機システムがエネルギーバランスの平衡を保ってる状態であること、また、わずかな要素とも化合する能力があることがわかる。
  3. 「急な傾き」の反応勾配をシステムの設計に組み込む
    システムは、生物学的な処理が急速に起こるようにデザインする。これにより、もっとも効率良く機能する構成要素の進化が確実になる。
  4. 急速なガスの交換が行われる
    微生物の生息の場となる広い表面積が必要である。
  5. 周期的・不定期な波動を加えることによるパフォーマンスの向上
    流動量に、時間的な周期をもたせる。自然界では天候によってこれが行われる。
  6. 構造モデルは細胞のデザインである
    細胞構造の機能は、お手本にするべき良いモデルである。
  7. 「最小の法則」を取り入れる
    それぞれのタンクはそれ自体で完成した世界だが、同時にそれぞれ相互に連結している。
  8. 微生物群を導入する   
  9. 光合成のできる基盤が必須である
  10. 系統発生の多様性を促進する
    カタツムリはシステムの健全性を示す立派なサインである。
  11. 繰り返し(微生物や植物の)「種まき」を続けることはメンテナンスの一部である
  12. 小宇宙を考えることは、デザインの根本である
    システムを本物の自然と比較してみる

reported by Douglas Fir