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ツリーハウス プロジェクト
ツリーハウスをのぞいてみよう
目標
自然に与える影響を最小にとどめると同時に、
近代的な生活を営むに足る快適な設備を提供する「構造」を作り出す。
 
 
概要

1995年、私ダグラス・ファーは、樹上に自立した建物を創ろうと一歩を踏み出す決意をした。共にアマチュア大工である友人の一人と私は、主に週末を使って一年以上の歳月を、その建築に費やした。こんなにも長い時間がかかったのは、そのハウスの周囲にあるどんなに小さな植物でさえ傷つけないようにと注意を払ったからだ。資材や友人たちへの賃金、さまざまなエネルギーシステムなどにかかった経費は、凡そ350万ほどとなった。

この建物は様々な理由で樹上に建てられた。混合式の建築素材の強度を実証すること、土地の植物群を傷つけない建築法を示し、環境への影響が少ない構造がもつ多様なシステムをわかりやすく説明すること、そして何より最大の理由は、この建物のデザイナーが木々に囲まれて時を過ごすことが大好きだから、かもしれない。

デッキ部分を含むツリーハウスは、六本の生木と古い一本の電信柱の中に、南向きの大きな張り出し窓をつけて建てられた。その場所は、台風が胡桃の木の大枝を一本吹き飛ばしたときに決定した(写 真)。その木と枝が作る隅が、(リサイクルされた電信柱を根太に使って)ツリーハウスの水平面 の基線の出発点になり、従って地上からの高さも決定された。基礎の四隅は全て、木を傷つけないようにプラスティクホースで包んだU型ボルトで木に付着されている。大勢の大人(25人程)が一度に入っても安全なように、北東と北西の松の木が支える角は建物の重みを支えるために支柱が置かれている。

家の寸法や用地は、建物を建てようと決めたその場所の自然のサイクルを一年間調べた後で決定した(写 真)。ハウスは、周囲の環境への影響を最小にしながら完全な自給を可能にしつつ、人一人が常住でき、時には二人で暮らすことも可能なように、そしてたまには20人程のパーティができるような内容と大きさにデザインされている。必要なエネルギーを作りだし、雨水を集蓄、リサイクルする、固形廃棄物は安全に堆肥化し、野生生物を維持させながらハウス近辺に生息する生き物たちの食物の一部を生産する、太陽熱や通 風を自然に利用して冷暖房とする。いずれ、余剰電気を発生させ、水から水素を分離させることができれば、調理用・暖房用のガスも作ることができる。

   
   
素材  
ガラス窓
 窓類(天窓やデッキに続くパティオドアも含めて)は、全て低Eアルゴンをはさんだ木枠の二重ガラスだ。ツリーハウス建築当時には、こうした窓は日本では生産されておらず輸入せざるをえなかった。このガラス窓技術は高い断熱効果 を持つ。
出窓
   
壁材と床材
 このパネルはサンドイッチ構造で、軽量だが固く接着されている。大体においては高性能な飛行機の翼のように組み立てられており、厚さ90ミリのスタイロフォーム(発砲スチロールの一種)がO.S.B.ボードにはさまれている。この
O.S.B.ボード(写 真)は薄い(2ミリ厚)木片を圧縮・結合させ、板状に縁を落としたものだ。標準の混合パネルは4×8フィート(1220×4880ミリ)だが、しばしば他のサイズ(4×16フィートまで)で大きく作られることもある。ツリーハウスのO.S.B.床パネルは、一度に20人の大人を乗せる重みに耐えるよう厚く(180ミリ以上)なっている。このパネルは丈夫で組み立て易く、非常に高い断熱性をもち、廃材やリサイクル木材を材料にしている。ツリーハウス建築当時、このパネルを使うハウスメーカーは一社だけだったが、現在ではその利点が良く知られ、新築時に(特に屋根に)頻繁に導入されている。2002年の段階では、私が暮らしている駒ケ根市の地元企業が一社、このパネルを生産している。スタイロフォームは現在、安全にリサイクルされ有毒ガスを発生させずに生産できるが、いずれはより天然な(かつ、ネズミや虫が好まないような)発砲材が大量 生産されるよう期待している。
   
外壁及び内壁
 外壁と内壁には、秋田県と、アメリカのワシントン州にある持続可能な管理をされている森林から取り寄せた、表面 を粗く仕上げた赤杉を使っている。
   
   
床(仕上げ)
 サクラ材で縁取りしたこのメイプル(楓)の床(写真)は、アメリカのメイン州で150年以上も持続可能な林業を実践している家族経営による会社から輸入した。伐採する木を選び、直後に次の木を植えつけ、森やそこに生きる野生生物へのダメージを最小限に押えている[メイン州のウェブサイトにリンク、参照のこと]。しかし、(室内でも靴をはくアメリカとは違って)靴下ややわらかいスリッパを履いて歩き回る家には、固い床材は必ずしも必要ではなかったかと後で気付いた。今は、床材にはできるだけ地元から資源を調達することを、遠距離輸送が引き起こす環境への影響を最小限にするために心からお薦めする。加えて、地域の林業を支援することはより望ましい。…但し。ツリーハウスでは、この六年で二千人を超える人を(靴を履いたままの子供も)迎え入れ、表面 はかなり傷だらけだ。結局、固い床材を選んで賢明だったのかもしれない。
   
デッキ
 三本の木に乗ってツリーハウスに隣接するデッキ部分は、カリフォルニア北部にあった大きなワイン樽からリサイクルしたレッドウッド(セコイアメスギ)で作られた。デッキを据えつけてから数年間は、雨が降るたびにワインの香りが辺りに漂ったものだ(写 真)。デッキは三角形の五本の桁(トラス)で支えられ、その全長は5メートルになる。
ウッドデッキ
   
その他のリサイクル素材
 床張りで残った木材の切れ端はキッチン・キャビネットに利用した(写 真)。天窓を支え屋根の厚みを隠している板材は、窓を梱包していた木枠で、水浄化用タンクの基礎は天井板の残りだ。デッキ製作の際に残った再利用のレッドウッドは、ハウス内部の各所の縁取りや、鳥の巣箱にリサイクルされた。辺りで見つけた小枝はタオル掛けやドアの取っ手に、その他の廃材はデッキに置いたプランターや巣箱になった。
   
屋根
 杉板(シェイク)をステープル(U字釘)を使って留めた。
   
   
システム  
   

エネルギー生産
 ツリーハウスの電力は、120ワットの光電池パネル二枚と、(最大)400ワットの風力発電機でまかなわれている。光電池パネルは北東にあるツリーハウスの支柱になる木の12メートル上に設置し、風力発電機は同じ木の頂上(35メートル高)部分に結いつけた金属と竹のポールに取り付けた。電気はワイヤーを通 してツリーハウスの下にある地下室の中のバッテリーまで運ばれる。

   

バッテリーエネルギー貯蓄
 直流の電力エネルギーは二本の「ディープサイクルフルカワ145アンペア/時間」の湿電池に蓄えられる。これで総計290アンペア/時間を蓄積できるが、容量 の30パーセント以上を引き出して使うことはあまりない。

電力の利用
 ハウスの電力システムは12ボルトDCで稼動し、各装置のスイッチが入っていなければ電磁波を生じない。電力を使用する装置は、浄水用の圧力ポンプ、排水汲み上げポンプ、ビデオ、四組のステレオ音響装置、天井照明、デッキの屋外照明、通 路用照明、読書用照明、保冷室、携帯電話とラップトップコンピューターだ。掃除機と洗濯機には直流・交流変換器を使って増幅させ、日本の標準である100ボルトACまで電圧を上げる。照明やステレオ、時々のポンプ使用のような低負荷の使用なら、三日ほど日光がなくとも、バッテリーはハウスの動力を賄える。しかし実際には雨天や曇天でも風は時々に吹いている。

   
冷 房
 夏の空調はそよ風だ。文字通りそのままの意味である。冷たい空気が掘り炬燵の底にある通 風孔から吸い上げられ、ロフト上部に開いた天窓から外に出る。ハウスは、日に何リットルもの水を葉から発散させる栗の木の陰になっているので、ツリーハウスの屋根が発する熱い空気は吸い込まれ、なくなってしまう。結果 として涼しく快適な、夏中気温15℃を保つ空間が出来上がる。
   
暖 房
 ハウスはよく断熱され完全にシーリングされているので(空気の取り込み、排気を除いて)、冬でも暖房を入れる必要はほとんどない。大方の熱は、冬の低い角度で差し込む日差しを取り込む南面 の窓から入り、排水と藻の入ったタンクを日中暖める。このタンクが夜間ゆっくりと熱を放出する。さらに日光は濃色の床に当たってこれも暖める。この天然のソーラーシステムはハウスを建てる前に太陽光の角度を細心に計算したからこそ機能するものだ。低Eアルゴンの二重ガラスの窓や引きドアには、夜間は断熱素材のカーテンを引いて熱を室内に閉じ込める。室内温度は真冬でもめったに10℃以下になることはない。年に十五回ほど、曇天が続いて雪が厚く積もり、外気温がマイナス10℃以下になるようなときには、炭炬燵(写 真)に火を入れてハウスを暖めなければいけない。時に急いでハウスを暖めたい場合は、小さな灯油ストーブのスイッチを入れるか、炬燵に炭を入れる。
   
調 理
***自然の木の匂いがする小さな家なので最近のツリーハウスで沸かされるのは水だけだ。
   
固形廃棄物
 野菜の残りクズはデッキのプランターに暮らすミミズの餌となり植物の肥しとなる。ツリーハウスで消化する能力を超えた、時に二十人の客をもてなすパーティのときには、近所に暮らす野生の仲間たちが宴会のお裾分けに与るときである。ボトルや瓶、缶 類が、稀ではあるが出た場合は、分別・リサイクルされる。
   
冷蔵庫
 キッチンの床下には12ボルトの保冷庫がある。冷たいものをしまうにはそこが一番いい場所だということを見せるデモンストレーション用としてそこにある。通 常の家で、冷えた地下の気温を利用すれば、食物の保存に必要なエネルギー量 を小さくすることができる。冷蔵庫は、小さなエレベーター付きで床下に搭載するのも面 白いと思っている。必要なときには、ボタンを押せば冷蔵庫が上ってくるのだ。子供は喜んで乗りたがるだろう。猫は嫌がるだろうが…。
   
冷蔵貯蔵
 ツリーハウスの下にある地下室には700リットルの水用タンクとバッテリーを置いてあるが、ここは食物の貯蔵室でもある。この室も断熱され、霜が降りる地平面 より低いので一年中13℃を保っている。根菜類の貯蔵庫には最適な温度だ。
水タンク
   
ツリーハウスをのぞいてみよう