小島姫 第2話
お妃様は遂に小島姫を亡き者にする決心をしました。
「中西!私だよ!」
深夜、お妃様が猟師小屋にやって来て言いました。
猟師は中西という、大変力持ちの、頭が悪い男です。

「どうしたんですか?こんな時間にお妃様。」
中西がそう言いながら扉を開けると、まずお妃様の目に飛び込んできたのは、
中西の目にも眩しい白パンツでした。

「中西、お前、そのパンツは?」
「良いでしょう。黒よりも股間が目立つから、フェロモン出しまくりですよ。」
中西はそう言いながら胸を張って見せます。
「ああ、わかった。わかったから、上に何か着てちょうだい。お前の体はいやらしすぎて
目のやり場に困るわ。」
お妃様が、幾分斜め下に視線を逸らしながら言うと、中西はのそのそと小屋に入って行き、
出てきたときには白い靴、白いパンツの上に、黒い半袖を着ただけの格好で現れました。

「どうですかお妃様?」
中西が胸を張って言いました。
しかし、もうお妃様にはツッコミを入れる気力も残っていません。
「ああ、・・・・・・いいんじゃない?で、私がここに来た用事なんだけど、」

「おお、そういえば何の用事でいらっしゃったのですか、お妃様。」
尋ねると、お妃様は辺りを見回して、中西に耳打ちしました。
「小島姫を森の中に連れ出しておくれ。もう2度とあの子を見たくない。あの子を殺して、
その証拠に、肺と肝を持ってくるのだよ。」
「つまり、小島姫を食べたいってことですか?」
中西が尋ねると、お妃様はすごい剣幕で怒鳴り散らしました。
「余計なことを考えないで、言われたことだけおやり!」
「はあ、わかりました。」


中西が小島姫の部屋のドアを開けると、姫はベッドでお菓子を食べながらビデオを見てい
ました。もちろんマル禁ビデオです。
「あら、中西じゃない。どうしたの、こんな夜中に?」
姫はそう尋ねますが、中西は既にモニターに釘付けで、全く聞いていません。
「もう、好きねえ。」
姫は肩を竦めると、お菓子を食べながらまた、視線をモニターに戻しました。
夜中に、靴と白いパンツと破れたTシャツしか身につけてない男が、腰に山刀をくくりつ
けて、マル禁ビデオに見入っているというのに、姫は全く疑問にも思わないのでしょうか。
バカの一言では済まされないような気もしますね。

ようやくマル禁ビデオが終わって、中西は我に帰りました。
むくっと身を起こすと、無言で小島姫を肩に担いで、のしのし歩いていきます。

「ちょっとぉ、どこに連れて行くのよぉ中西ぃ!お菓子をおいてきちゃったじゃないのぉ。
降ろしなさいよ。」
夜中ということもあり、姫の頭はいつに無くボケまくっているようです。
しかし、さすがに夜中の森の冷たい空気に触れて、さすがに姫の頭も普段くらいには働く
ようになってきたようで、暴れだしました。
「なんだバカヤロー!降ろせよぉー!な・か・に・っしー!」
そう叫びながら、姫の体をかつぐ中西の頭を、ポカポカと殴りはじめました。
しかし悲しいかな、既にそこは深い森の中。姫の叫び声を聞いてるのは中西と森の獣たち
だけです。
中西は、姫の体を水車落としの要領で、前へドサっと投げ下ろします。
「バカヤロー!もうちょっと丁寧に降ろせよ、な・か・に・っしぃ!」
姫は姫なりに厳重に抗議をしますが、中西が腰の山刀を抜くと、とたんに態度が変わりま
した。
「ね、ねえちょっと中西、あたしをそれでどうするつもりなの?や、やめてよぉそういう
冗談は。ね。」
中西は、唇を尖らせてそのように言う小島姫を、ちょっと愛しく思ったのですが、恐いお
妃様の命令には逆らえません。

「姫、あなたをこれから解体します。」
「か、解体!?その恐ろしい山刀で?あたしがあなたに何をしたっていうの?ゆるして中
西!悪いところがあったら直すから、機嫌直して。」
小島姫が必死に懇願します。
「あなたには何も恨みはないですけど、お妃様があなたのことを嫌っているので、俺にあ
なたの解体を命令されたのです。うらむならお妃様をうらんでください。」
中西は、ちょっと上の方をむきながら、考え考え、つっかえながらもセリフを言い終えま
す。あからさまに頭が悪いですね。
小島姫は、命の危険が迫っているのを感じ、いつに無く猛スピードで頭脳を働かせます。
「ああ、中西、どうか命だけは助けてちょうだい。あたし、この奥深い森の中に入ってい
って、もう二度とお城へは帰らないから。」
姫は、愛らしい唇を存分に尖らせます。
中西は、その唇にころりとだまされてしまい、言いました。
「そんなら、お逃げなさい。かわいそうに。」
けれども、心の中では(じきに、恐ろしいけだものに食われてしまうだろう)と、考えて
いました。
中西は、自分が一番恐ろしいけだものであることに気が付いていないようですね。
何人の女の人を、その白パンツで悩殺してきたんでしょう。
まあ、それはそれとして、中西はとにかく、自分の手で殺さずにすんだので、胸の重石が
ころげおちたような気がしました。
ちょうどそこへ、イノシシの子が飛び出してきたので、中西はこれをさし殺して肺と肝を
取り出しました。
「こうやってやると解体がスムーズにいくんですよ。」
とか、ぶつぶつ言ってます。
それを見ていた小島姫は、
「わあ、中西、お前ってすごいのね!」
そう言って唇を尖らせるので、中西は(殺さなくてよかった)と思うのでした。

さて、お妃様は中西の持ち帰った肺と肝を、料理人に塩味で料理するように命じて、食べ
てしまいました。
「これで一番人気は私のものだわ。」
お妃様は満足して、久しぶりにぐっすりと眠るのでした。


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小島姫本編         
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